大黒昭夫
木材をレゾール型フェノール樹脂(以下レゾールと略)で処理 した材料の性質は,レゾールの縮合度や硬化度などに影響されると言われてきた。しかし,最近のレ ゾールの分析方法の進歩に伴い,これまでの縮合度にとどまらずその分子量分布のちがいやそれを構 成するメチロールフェノールの同定も可能になってきた。
本研究では,レゾールによる木材の材質改良に資するため,これら新しい分析法を用い,低分子量 側にピークをもつレゾール(LR)と高分子量側にピークをもつレゾール(HR)を合成し,それら単 独並びに,それらを木材に適用した場合(木材-レゾール混合系)の硬化過程を検討した。
なお,硬化度の追跡には,加熱による重量変化に基づく重量硬化指数(WCI)と,硬化物のアセト ン抽出分の赤外スペクトルから求めたメチロール指数(D1,000p-1 /D1,610p-1)およびIR指数(D820p -1/D1,000p-1)を用いた。その際, メチロール指数はLR,HR,およびそれらの混合系のすべてに,IR指数はHRおよびその混合系に,WCI はLRの混合系にそれぞれ適用できた。
これら硬化度の追跡から,1核体を中心とするLRは,レゾールの活性基であるメチロール基と木材 との間の親和性の大きいことがみられ,また,木材中への浸透性の容易さから木材の樹脂処理に適し たレゾールであり,3核体を中心としたHRでは,LRに比べて硬化が容易であることなどから接着性の よいレゾールであることがわかった。
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