森林施業に伴う夏期間の水収支の動態の予測法

遠藤泰造

   要旨

 この報告は気層−土壌層−地被植生から成る水収支系を若干 のパラメータを用いた単純な数式モデルに還元し,林況変化に伴う夏期間の水収支の動態を予測 する一つの方法を論述したものである。気層に関するパラメータは日平均気温と日雨量,土壌層 は有効土壌水分量およびその最大値,地被植生の状況は林分のうつ閉度を用いて表現した。水収 支の計算は日単位とし,6月から10月までの夏期5か月の水収支を取扱った。収支項目は雨量,蒸 発散位,蒸発散量,流出量,有効土壌水分量およびその付加,減少および不足の各量の8項目であ る。日蒸発散位はHAMONの経験式から計算し,これに有効土壌水分量その他 の関数である修正係数(Θ)を乗じて日蒸発散量を求めた。水収支計算上の林況は堆積有機物(A 0層)床林地と更新林地(野草の繁茂する皆伐跡地,更新期間の 未閉鎖林分および閉鎖林分を含む)の2種類とし,各林況に対する水収支の計量方法を論述した。A 0層床林地に対してはA0層の有 効貯水容量を中心に水収支の各項目を定式化した。更新林地の水収支は有効土壌水分量,日雨量お よび日蒸発散量の間の水分移動を定式化して計量した。有効土壌水分の不足量と日蒸発散量との和 分量を越える雨水分は流出分とした。収支計算で最重要な修正係数(Θ)の算出式にうつ閉度ある いは立木本数と樹高あるいは林齢を導入することによって,林況変化に対する水収支の量的評価と 予測とが可能となる。

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