竜の口山試験地における森林の成立が流出に及ぼす影響

藤枝基久,阿部敏夫

   要旨

 林業試験場竜の口山森林理水試験地の南谷・北谷流域について, 森林の成立に伴う林況変化が年間水収支と流出特性におよぼす影響を検討した。年間水収支について は,森林の成立により年流出量が南谷で15%,北谷で18%減少した。年基底流出量の減少も見られ, その多くは出水直後の遅い中間流を含む期間のものと推定されるが,低水期間の地下水流量も減少し た。流出特性の面より一降雨とそれに伴う出水の関係を検討すると,直接流出量は大出水時において 10〜15o減少した。ピーク流量の遅帯時間は,いくぶん長くなる傾向が見られ,ピーク流出係数はそ の最大値の比較において南谷で森林成立以前の約15%の減少が見られたが,北谷では明確な差は検出 されなかった。表面流出の減水係数は森林成立以前の平均値との比較において,南谷で34%,北谷で 12%減少したが,中間流出,基底流出については変化がなかった。これらの結果より,森林の成立は 一降雨による直接流出量を減少し,ハイドログラフの平滑化を招くことが分かった。

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