造林地における下刈,除伐,つる切りに関する基礎的研究
(第1報)

スギ幼齢造林地におけるスギと雑草木の生長

谷本丈夫

   要旨

 下刈,つる切り,除伐などの保育技術研究の一環として,植栽から 閉鎖に至るまでのスギ幼齢造林地において,スギと雑草木の生長と,それらの相互作用を解析した。雑草 木群落は萠芽再生種,新たな侵入種などで構成され,土地条件,下刈条件により異なるが,時間の経過と ともに複雑な混合群落を形成する。これらの雑草木は種に特有な生育特性から,生育型として9類型に区 分できた。雑草木群落での遷移過程の中での優占種の交代は,主に光条件の利用に関する各生育型の特性 がもたらしていると考えられた。一方,混合群落の構造と相対照度を検討し,吸光係数の違いから群落型 を三つに区分し,それぞれについて,群落高から群落内の任意の位置の相対照度を推定する経験式を得た。 幼齢時のスギの生長は,土地条件や下刈の違いで変化するが,葉量と生長量との関係をみると,樹高生長 では葉量約200g,直径(地上20cm)生長では葉量約450gまでは,葉量の増加とともに当年生長量が比例的 に増加する。それ以上の葉量となると変動が大きくなった。幼齢期のスギの樹冠上層部の形状は,樹齢に 関係なくほぼ円錐の相似形で示された。雑草木群落の中でのスギの生長を考えるとき,スギの葉量とくに 上層からの葉量の分布が重要であるが,スギの樹高ごとに,一定の積算葉量に達する地上高を推定する経 験式を求めた。以上の成果はスギと雑草木群落との相互関係について,総合的に検討するときの基礎とな り,効率的,体系的な下刈などの保育技術の確立に役立つ。

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