林内緩斜地における浅層地下水位の変化

北原 曜,遠藤泰造,真島征夫,阿部和時

   要旨

 山地の浅い土層内における地下水位変化を研究するために,林業試験場 北海道支場羊ケ丘実験林内とその周辺林地などに多数の浅井戸を掘削し,1979年夏期より観測を開始した。 このうち,非集水地形で緩斜面の落葉広葉樹林内に設置した浅井戸列の地下水位資料を,非定常自由地下 水面式を用いて解析した。浅層地下水位は土壌の透水係数と有効間隙率との比に大きく影響されるが,これ に加えて緩斜面では蒸発散量に著しく影響されることが判明した。蒸発散による浅層地下水位の日周変化は, 落葉広葉樹の新葉展開最盛期から紅葉期までの期間に観測されたが,日減水深は各月によって大きく異な り,日射量だけを用いた推定日蒸発散量との比較を行った。深層浸透量については,晩秋の地下水位資料か ら算出できた。有効雨量についても,1降雨量と地下水位上昇の有無についての関係から求められたが,損失 雨量は若葉期と若葉量の少ない時期とでは差がみられた。斜面傾斜角(θ),土壌の透水係数(k) と有効間隙率(s),有効雨量(Re),深層浸透量(F), 蒸発散量(E)を含めた地下水位(y)に関する理論式を導き,下記の差分式に変換して観測地下水位 と比較した。

xは斜面下端を原点にとった斜面上部方向への距離,tは時間。
 計算の結果,理論式による浅層地下水位の推定値は,観測地下水位ときわめてよく一致することがわかった。

 

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