(研究資料)

30年経過した木造住宅における鉄釘の劣化調査

今村浩人,金谷紀行,高木 純,大黒昭夫,唐沢仁志,千葉保人

   要旨

 昭和27年に建設され30年経過した3戸の横浜市営住宅において鉄釘の劣化状態を調査した。対象とした家屋は約35uの木造平家建である。釘の劣化度の評価は目視により劣化度の大きさの順に5〜1とした。屋根はセメントがわらぶきであり,かわらの下は部分的な補修が施され,また居所的にはこけらに損傷がみられた。しかし,かわら桟における釘の劣化は全体としてあまり進んでいない。和室において,たたみ下地と根太を接合する釘の劣化度の分布を調べた結果,3室のうち2室では,縁側から内部に向かうにしたがって,釘の劣化も進んでいた。玄関は台所と便所の間に位置し,その床の釘は比較的劣化が少ない。便所の内壁における釘はかなり劣化が進んでいる。外壁の下見板における釘は,調査した箇所のほとんどについて,上部より下部へと劣化度が大きくなる。また妻壁上部のみにあるモルタル塗り壁の下地における釘は,下見板上部の釘より劣化が進んでいる。
 本調査により,つぎのことが判明下。すなわち,従来から断片的に指摘されてきたように,雨水または生活用水により高含水率となる部位にある釘は劣化が著しい。したがって釘の劣化を促進する最大の因子は水であると考えられる。これは,部材である木材の腐朽原因と一致する。木材の腐朽は,目視による健全部から腐朽部への移行が比較的急激であるのに対し,その部位にある釘は段階的に劣化している。また,釘の劣化の方がより早期に判定出来る。したがって,釘の劣化度の評価は,それ自体重要であるだけでなく,部材の劣化の予測にもなるであろう。

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