近嵐弘栄,服部重昭
樹冠の降雨遮断現象により.降雨の一部が消失し,残りが樹冠通過雨量,樹幹流下量として,林地の地 表面に到達する過程を,ヒノキ人工林における観測データを用いて時系列的に解析した。樹冠による降雨の遮断 現象は,雨水の一時的な保留と放出の過程とみなしうるから,遮断量は,降雨継続時間によって指数関数的に減 衰するものとみなし,初期遮断能,減衰係数,最終遮断能を検討した。その結果,減衰曲線は,降雨強度別に求め うることが明らかとなった。その場合,初期遮断能は,樹冠のうっ開状態と降雨強度とから推定することができ,最 終遮断能は降雨強度にかかわらず,常に一定値となった。減衰係数は,降雨強度の小さい場合はほぼ一定で,あ る限界をこえたところで増加することが見出された。さらに,樹冠の保留雨量と遮断機能との間に一定の相関性を 仮定し,降雨の中断時,または終了後における樹冠の保留雨量が指数関数的に減衰するものとみなし,遮断能の 回復過程を検討した。その結果,樹冠保留雨量の減衰係数は,ほぼ一定値となることが見出され,遮断能の回復 過程が明らかになった。これらの結果により,降雨資料から,有効林内雨量を時系列として推定した。この有効林 内雨量は,林地の地表面に到達するのには,時間的な遅滞帯が生ずるので,流出関数法の計算方式を適用する ことにより,林内雨量を時系列として推定する方法を検討した。これらの推定法により,ヒノキ入工林において林内 雨量を推定した結果,実測値とほぼ良好な一致が認められた。
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