厚単板切削において単板品質に及ぼす切削条件の影響

木下敍幸

   要旨

 現在,合板製造において一般に利用されている単板の厚さ は3〜4mm以下であるが,単板積層材(Laminated Veneer Lumber)あるいは厚い合板を製造する 場合,単板厚さが厚いほど製造コストおよび製造工程上有利になる。本報告では,ベニヤレース で最高15mmまでの単板切削を行い,原単板製造に際しての適正製造条件を求める目的で,単板品 質に対する単板歩出し厚さ,原木煮沸温度,刃物とバー間の刃口条件などの影響を調べた。
 供試樹種は,東南アジア産広葉樹林4樹種(バクチカン,アルモン,アピトン,アンベロイ)お よびニュージーランド産針葉樹林1樹種(ラジアータパイン)である。単板品質に対して最も大き な影響を与える切削条件は,刃先とノーズバー先端問の刃口間隔で,刃口間隔を狭くすることに より,裏割れ率および雨あらさは低下する。しかし,狭くしすぎると,切削初期の単板厚さが極 端に薄くなる現象が現れる。これらを総合した最適刃口間隔条件は,単板歩出し厚さの約90%程 度といえる。単板歩出し厚さが厚くなるほど単板品質は当然低下するが,10mm程度の原単板切削 を行う場合,単板品質面だけでなく,切削抵抗を小さくしチャックの空転および原木割れを少な くするために,原木の煮沸処理は不可欠になる。処理温度は,比重の高いアピトンでは90℃以上 必要であるが,バクチカンでは50℃程度でも効果が認められる。ただ,ラジアータパインでは高 温で処理しても,単板品質の大幅な向上は期待できない。

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