有節材の強度推定に関する研究

畑山

   要旨

 実大木材強度に最も大きな影響を与えるのは節の存在である。ASTMでは 有節材の強度を推定する場合,節を単に断面欠損として扱っているが,この方法によって求めた推定強度値は 実験値とあわないことが多い。節による強度低減には前そのものの強度のほかに節周辺の繊維走向傾斜が関係 していることがすでに多くの研究者によって指摘されている。しかし,これまで強度との関連で節周辺の繊維 走向について研究しているものはない。筆者はベイツガ,ベイモミ,スギ,アカマツの節周辺の材を細分して 行った引張試験の結果から,樹種や節の品質(生節,死節)および節の大きさによってそれぞれ節周辺の繊維 走向傾斜θ(deg)の分布に特性のあることを見出し,つぎのような一般式を導いた。

     

 ただし,Nは樹種および節の品質によって決まる定数,φは節の平均接線径(p),Xは節の端からの水平 距離(p)である。一方,θと引張強度,引張ヤング係数および圧縮強度との関係を実験によって確かめ, HALINKINSON式を適用して,それぞれの定数を求めた。つぎにこれらの実験式を用いて求めた節周辺の強度分 布から有節材の引張,圧縮および曲げ強度を推定し,実験値との比を求めた結果,それぞれ平均0.94,0.99, 0.91となり,かなりよく一致することが確かめられた。このことから有節材の諸強度は前そのもののほかに節 周辺の繊維走向傾斜が強く関係し,むしろそれが本質的なものであることが数値的に確認された。ここに提案 する有節材の強度推定法が広く応用されることを期待したい。

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