枝打ちに関する基礎的研究 W

枝打ちに伴う材の変色の発生要因

藤森隆郎,伊沢浩一,金沢洋一,清野嘉之

   要旨

 スギの若齢木の枝打ちと人為的傷つけの処理を行い,材の変色の 発生を調査した。枝打ちによる傷で,樹皮剥離と枝隆切除では変色が100%発生し,節に接続した幹の 年輪の割れでは76%,幹の打撃による内樹皮剥離では55%の変色発生率であった。枝打ちの残枝の 割れや前への残物付着の場合では,1例も変色が認められなかった。以上の処理による材の変色の発 生は,幹の生きた細胞に傷のつくことに起因することが明らかとなった。なお,枝打ち以外の原因により 傷がつき変色している例もみられ,死節や入皮からの変色も多かった。これら枝打ち以外の原因による 変色は,別途解明する必要がある。
 枝打ちによる傷と変色の発生は,春から夏の期間に多く,特に樹皮剥離の発生にその傾向が認めら れた。枝打ち器具と傷・変色発生の関係では,ノコ使用の場合発生は少ないが,ナタでは樹皮剥離の 発生が多かった。樹皮剥離による傷長,変色長は他の傷の3〜5倍の大きさになるので,傷として重い ものであった。枝打ちの残枝径や残枝長と傷・変色との関係は認められなかった。これは従来の報告 結果と異なるが,供試された枝径の変異の幅が狭く,また熟練者による作業の結果と考えられた。傷・ 変色の有無と巻き込みの早さとの間には,一定の傾向は認められなかった。以上の結果に,これまで の文献を加えて考察し,枝打ちと変色に関する研究成果を総括し,残された問題点を整理指摘した。

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