ヒノキ造林地におけるつる植物と被害

鈴木和次郎

   要旨

 林冠が閉鎖して以降のヒノキ造林地におけるつる植物の種組成と植栽木の 被害の実態を知るため,筑波山周辺の約10〜80年生ヒノキ人工林7外分で調査を行った。
 各林分に出現するつる植物の種組成に大きな差違はみられなかったが,植栽木に巻きついたつる植物では, 林齢がたかくなるに従い,つるの伸長習性にもとづく生育型からみると,付着型のもの(テイカカズラ,ツタウルシ など)の種類数の増加が認められた。植栽木のうちつる植物に巻きつかれたものの割合は,林冠の閉鎖の強い 若齢林分では1〜5%と少ないが,壮齢林分では,75〜96%あり,その巻きつき状態も,植栽木の樹冠全体,ま たは,一部に巻きつくものの割合が高かった。また,壮齢林分において植栽木に巻きついていたつる植物は,そ の齢解析から,除間伐にともない,林冠の閉鎖が破られることにより,巻きつき,繁茂が起ったと推察された。
 つる植物による植栽木の被害は,植栽木への巻きつき,くいこみの被害(くいこみ型)と樹冠への覆いかぶさり の被害(覆い型)に大別される。事例調査を行った結果,くいこみ型の被害はつる植物を取り除いた後も植栽木 に影響をおよぼし続け,材の生長,形質の悪化につながることがわかった。一方,覆い型の被害は植栽木の光 −同化作用を妨げ,生長を阻害することが示唆された。

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