ブナ種子の発芽に対する除草剤の影響

浅沼晟吾,林 敬太,大場貞男

   要旨

 ブナ林の天然更新では,林床のササの処理が重要な作業であり,このため,刈 払いのほかに除草剤が利用されている。ブナ種子の発芽に対する除草剤の影響をみるため,NaClO3 剤とテトラピオン剤で調製した薬液中での発芽経過を,薬液の濃度,吸収時間と吸収時期を変えて検討した。
 NaClO3剤では,種子が長期に薬液を吸収する場合には,500ppmないし1,000ppm以上の濃度 で明らかな発芽阻害を示した。種子の吸水の初め72時間だけ薬液を吸収させても,基本的に同様な傾向がみられ, 5,000ppm以上の濃度で発芽阻害が現れた。さらに,吸水初めの72時間を中途で2期に分け,その初期に水,後期に 薬液を吸収させた組合せの場合と,逆に,初期に薬液,後期に水の組合せの場合とを比較した。種子の吸水過程初 めの特性から,同一濃度同一時間の吸収でも,前者では後者よりも除草剤成分の吸収量が少なかったが,発芽阻害 は前者に強く現れ,種子重当たりNaClO3推定吸収量0.3〜0.5mg/gで,前者では発芽がほとんど みられなくなるが,後者では発芽がやや低下した程度であった。発芽過程初期のころに薬液を吸収する時期の違い が,発芽に対して極めて大きく影響することがわかった。以上の反応は,種子の産地・年次や取扱いなど,性状の違 いによって多少の差はあったが,基本的には同じであった。
 テトラピオン剤でも同じ方法で薬液処理を行ったが,実験の上限濃度500ppmまでのどの濃度処理でも,ブナ種子の 発芽阻害の作用は認められなかった。

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