木質釘着パネルの非線形曲げ解析 第1報

基本モデルとしての釘着梁の解析

神谷文夫

   要旨

 面材を釘打ちして構成した壁や床は,面材の協力効果により高い曲げ 剛性を示すが,面材をとめている釘接合部が辷りを生じて非線形の剛性を示すこと,面材応力の幅方向の 分布が不均等であることなどがあって,その耐力機構は複雑である。
 この曲げの性状を解析的に予測する方法としては有限要素法があるが,プログラムが複雑で大型計算機 を必要とする。そこで,もっと簡単に求める方法として,従来の力学理論に基づく解析を試みた。
 まず,釘接合部の辷りについて検討するために,応力の幅方向の分布が一様とみなせる2層または3層の 釘着梁を基本モデルとしてとりあげ,その解析を行った。誘導した理論式は,すべての釘接合部における力 と変形の関係式を求め,連立に解くものであるが,隣り合う釘の辷りの差をとることにより,逐次近似法で簡 単に計算することができ,電子計算機の必要とする記憶容量もわずかである。
 もし,釘接合部の辷りの分布が仮定できるなら,紙上の計算も可能である。そこで,その分布は釘を打たず に単に重ね合わせた梁の辷りの分布と等しいと仮定して,計算を行った。その結果,理論式とほとんど差の ない解が得られ,この方法は略算法として有効であることがわかった。
 実験を行って理論式,近似式の適合性を検討した結果,両式は釘着梁の曲げ性状を良く予測することがわ かった。また,釘間隔や荷重方式などのパラメータを変えた数値実験を行った。その結果,釘間隔をつめたと きの剛性の増加が定性的に得られ,中央集中荷重のときの剛性は他の荷重方式と比べ,もっとも低いことな どがわかった。

全文情報(776KB)