アカマツ苗木における新梢,針葉および根の生長の経時変化とその相互関係

−温度条件の違いを中心とした考察−

佐々朋幸

   要旨

 枯死・脱落した林木の根は林地へ多量な有機物を供給するだけでなく, 各種養分の供給にも大きな役割を果たしているものと考えられる。しかし,この分野の研究は多くの困難を伴うため,これまでのところ報告もほとんどみられない。
 そこで,問題解決の第一歩として,林業試験場苗畑の自然温度条件および人工気象室内での二とおりの人工温度条件下(昼間20℃,夜間15℃と昼間25℃,夜間20℃の二とおり,いずれも自然光)で,アカマツ苗木の地上,地下部における生長の経時変化を調べた。
 その結果,以下のことが明らかになった。
1.自然温度条件下では地上,地下部の伸長生長量のピークはほぼ一致する。また,両者の旺盛な生長期間 も一致する。
2.新芽の活動と新生根の発生の間には,かなり密接かつ複雑な関係があるらしい。
3.気温の変化に対する地上部生育活動の変化の度合は,地温の変化に対する地下部生育活動の変化の度合に比べて小さい。また,地上部が活動を停止している場合でも,地温次第で根は独自の生育活動ができる。
4.新生発生根数の約80%が1〜2週間以内に褐色化し,枯死あるいは菌根として存在するようになる。

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