ヒノキの花成反応に及ぼす光処理の効果*

長尾精文,佐々木恵彦

   要旨

 実生およびサシキクローンのヒノキ2〜3年生苗木を用い,環境調 節施設および自然条件下において,種々の長日処理を行うことによって花芽形成を誘導した。ヒノキ の花芽形成には一定時間以上の主明期をもつ長日とある強さ以上の主明期の照度が必要であり,16時 間日長における限界照度は雄花では12klux,雌花では21kluxであった。強光になるほど花芽の形成は 早く,着生数も多くなる。照度42klux,16時間日長では,雌花は3週間,雄花は4週間の日長処理期間 を必要とした。短い主明期のあとに弱光で補光をすることによっても花芽形成を誘導することができ るが,主明期が25kluxの場合には,雌花の分化には最低10時間,雄花では14時間以上の主明期を必要 とする。つまり,主明期が14時間以上あれば補光によって雌・雄花芽の形成を誘導することができる。 補光と同様な長日効果をもつ光中断もヒノキの花芽形成に効果がある。主明期10〜14時間の場合,そ の後の暗期の真中で2時間(500lux)の光中断を行うことによって雌,雄両花の分化が起こり,主明期 の時間が長いほど光中断による花芽の形成が増加する。自然条件では花芽形成の起こりにくいクロー ンでも,花芽形成に対する光中断,長日処理の効果は大きい。
 一方,自然光下では,日長の長い7月に補充効果が最も大きい。同様に7月には光中断の効果も著し く,真夜中に2時間の光中断をすることによって花芽の形成を誘導することができる。このように補光, 光中断処理は弱光でもヒノキの花芽形成に効果が著しく,採種園における種子生産への応用が可能で ある。

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