都市近郊樹林地における林床植生の種組成の変化に及ぼす踏圧の影響

谷本丈夫,鈴木和次郎

   要旨

 都市近郊林における林床植生の動態と踏圧との関係を検討した。 まず,踏圧の程度が異なる林床において群落組成を調べた。山中式土壌硬度計で27mm以上の値を示す 土壌ではしばしば無植生になり,30mm以上では完全に無植生となった。硬度16〜27mmの範囲ではオオ バコ,オヒシバなどの踏つけ群落の構成種が生育し,林内を主な生育地とする種は硬度16mm以下の軟 かい土壌条件のもとで正常な生育になることを確めた。次に踏圧の影響がなくなった場合の種組成と 土壌硬度の変化を5年間調べた。土壌硬度は踏圧の影響がなくなると,急速に軟化するが,硬い土壌 ほどある程度の軟かさに回復するまでに時間がかかり,その後は直線的に軟化が進む。土壌の軟化に つれて,林床植生の種数が増加する傾向があるが,バラツキが大きかった。ある程度土壌が軟化する と,土壌硬度よりも林内の明るさや水分条件,種子供給量,生育の速さなどの諸要因が複雑に影響し あい,早くから少数種で優占したり,反対に多種が共存し優占種が明確でなくなるなど,さまざまな 群落形成過程を経るためと思われる。踏圧による土壌硬化を抑制するのに,植被や敷ワラが効果があ るかどうかを調べた。地上部が刈り込まれ密に繁り,地下茎がよく発達したマット状のアズマネザサ が一番緩和効果が高かった。裸地では踏圧によって急速に土壌は硬度27mm以上に達してしまう。しか し植生が存在すると土壌固結化の緩和に役立つことを確かめた。敷ワラの土壌硬化緩和効果は,敷ワ ラが厚くなる程大きかった。

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