木材高含水率の計器測定

斎藤寿義

   要旨

 木材の加工工程での水分管理に電気式含水率計が広く用いられており,繊維飽和点以下の 含水率域に関する限り,その性能は著しく向上している。一方,乾燥工程,薬剤処理工程などにおいて繊維飽和点以上の高含水 率の計器測定に対する要求は強いが,現在最も一般的な直流低抗方式では,高含水率域において含水率変化に対する抵抗変化が 少ない特性から,高含水率測定には基本的に問題がある。このため従来ほとんど用いられていなかった方法である熱伝導,電極 電位計,および交流低抗の三方式をとりあげ高含水率測定法としての適応性を検討した。測定器は熱伝導方式には非定常熱伝導 率測定装置を,交流抵抗方式にはLCRメーターを応用し,電極電位計方式は特注装置を使用した。供試樹種は針葉樹3種,広葉樹 11種を選び,飽水状態に近い湿潤材をゆっくり乾燥させ,各段階の含水率に調整した。
 実験結果では三方式とも繊維飽和点以上の高含水率域で含水率と計器指示値との間に直流抵抗式以上に密接な関係が示された。 熱伝導,交流抵抗の二方式では比重をパラメーターとする双曲線的関係であり,電極電位計方式では樹種グループによって異な る直線的関係である。従って基本的には三方式とも高含水率の計器測定法として可能性をもつが,実用化にあたっては比重補正, 樹種補正,応答時間など,いくつかの問題が残されている。

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