落葉広葉樹林内の光強度推定に関する研究

荒木眞之

要旨:従来,植物群落内における光強度の垂直変化を把握する基本式として,均質体を対象とするBEER-LAMBERT式が適用されてきた。しかし,計量植物学的研究の進展に伴い,この式の使用には限界があることがわかった。そこで,本研究においては,木本群落における林内光環境の形成機構を解明するため,まず新たな基本式として部分葉層の光透過率という概念を定義した。つぎに,部分葉層の底面積(A),部分葉層中の薄層数(n1),薄層中の葉面積・幹断面積・枝投影面積(Al・As・Ab),葉の光透過率(Ltr)などから,散光条件下の広葉樹林における部分葉層の光透過率(TS')を推定する式
TS'(%)=<{[(A-Aj-As-Ab)×100+(Aj×Ltr)]/A}/100>n1×100
を作成した。ただし,薄層の厚さは葉傾角と葉長から決まるものである。樹高0.8〜2.2mの8樹種の落葉広葉樹模型林による検証の結果,推定精度は実測値と推定値間の柏関係数が0.964〜0.647と良好であることがわかった。つぎに,葉傾角・葉長・層の葉面積など葉群の性質を表わす諸要因がおのおの相対照度に対して明確な回帰関係を示すことを明らかにした。続いて,光透過率推定式および各要因と相対照度間の回帰式を結合させて,葉層内照度の垂直変化に関するシミュレーションモデルを作成したりこのモデルは,葉層内の光環境と葉群の性質間の作用−反作用系の機能をトレースするよう作成されたことが特徴であって,8樹種の模型林における相対照度実測値と推定値間の相関係数は0.997〜0.913ときわめて高いことがわかった。

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 −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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