面材張耐力壁の構成と剪断耐カ

神谷文夫

   要旨

 合板などの面材を釘打ちした耐力壁は,建設告示に大略的な構成仕様が規定され,倍率 (許容剪断耐力)が与えられているが,規定内の構成であっても面材の寸法(縦横の長さ),張り方(縦張りと横張り),柱 の間隔などによって剪断耐力が変わることが予想される。
 本研究は,現在行われている,また将来行われる可能性のある構成方法によった耐力壁の最大耐力や剛性などを解析的方法 によって求め,比較検討したものである。対象としたのは在来工法および枠組壁工法による耐力壁であるが,因子の影響を鮮 明にするために単純化したモデルも用いた。
 工法に関係なくつぎの定性的な傾向が得られた。
 面材寸法の影響:面材寸法が大きいほど,許容耐力の算定基礎である1/300rad変形時の耐力,最大耐力(ともに壁長さ1m当 たり)は大きくなる。しかしながら,最大耐力の上昇の程度は1/300rad変形時の耐力ほどではないので安全率は減少する。ま た,最大耐力時の剪断歪も減少する。したがって,大きな面材を用いることが必ずしも構造安全性を高めることにはならない 。
 張り方の影響:横張りの方が縦張りより,1/300rad変形時の耐力,最大耐力時の剪断歪は大きいが,差はわずかである。
 柱の間隔の影響:柱の間隔が狭くなるほど,すなわち面材の中通りの柱の本数が多いほど,1/300rad変形時の耐カ,最大耐 力,最大耐カ時の剪断歪は大きくなる。その割合は柱1本につき1〜3%である。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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