中部山岳地帯針葉樹の主要さび病に関する研究

浜 武人

   要旨

 中部山岳地帯で針葉樹を侵す不明点の多い数種のさび病の研究を行った。ウラジロモミ のてんぐ巣病は湿潤地に多発し,幼齢木の主幹部に寄生した場合はこれを枯死させ,壮齢木も寄生数が多くなると顕著な生育 障害をうけ,中間宿主上の病原菌は芽から侵入し,生活史は3年である。ヤツガタケトウヒ・ヒメマツハダはトウヒ類のさび 病には極めて罹病性で,幼壮齢木に顕著な落葉を生じ,幼齢木には枯死木を生する場合があり,中間宿主はなく,病原菌は葉 から侵入し生活史は1年である。サワラのさび病は湿潤地に多発し,幼壮齢木の主幹部と主枝に著しい凹陥を生じ,溝腐症状 を呈するに至る病害で,中間宿主上の病原菌はサワラ枝葉の幼若な部分から侵入し生活史は2年である。アスナロのてんぐ巣 病も湿潤地に多発し,幼齢木に多数の枯死木と仕齢木に著しい衰弱木を生ずるが,中間宿主はなく生活史は1年である。アカ マツの葉さび病(中問宿主キハダ類)は,両種を混交した場合偶発し幼齢造林木は枯死する場合がある。本病菌の生活史には 1年型と2年型の二つがある。ハイマツの発しんさび病は中部山岳地帯の諸高山に広く発生していて,罹病したハイマツは衰弱 枯死する。病原菌は,中問宿主に対する接種試験の結果,北海道,東北地方に発生しているものと同一系統であるが,この地 帯のストローブマツ,チョウセンゴヨウには感染が認められていない。

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   −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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