枝打ちと陽光量がトドマツ材の年輪構造に及ぼす影響

中川伸策

   要旨

 トドマツを試料に用いて,木材の材質に影響を及ぼすと考えられる因子として陽光量と枝 の量を取り上げ,これらの因子を調節することにより,年輪幅,晩材率,早材比重,最大および最低比重,平均比重などがど のように変動するか検討した。
 この試験は天然生のトドマツを対象として行った「木材材質の森林生物学的研究」の成果を受けて,環境要因の材質に及ぼ す影響を定量的に求めようとしたものである。
 この試験の結果,陽光量を50%に調整し同じ年次に形成された年輪を比べると,1)年輪幅は約30%低減する。2)早材比重, 最低比重は5〜7%増加し,平均比重も約6%増加する。一方,同じ期間中に形成された等しい年輪幅を摘出して比べると,3) 平均比重,早材比重は約5〜8%低減する。4)晩材率は,年輪幅1.0〜4.0oの範囲内で3〜10%少なくなる。
 次に5年間連続して枝打ちを樹高の1/2まで継続して行った場合は,1)早材比重,最低比重で7%,8%,2)最大比重で5%, 3)平均比重では12%,それぞれ枝打ちをしなかったものに比較して大きい値を示した。
 上述のように陽光量の調節は,見かけ上の早材比重,平均比重を押し上げているが,年輪の構造からは,各比重値および晩 材率の減少は明らかである。また,枝打ちをした場合の年輪内の各比重値および晩材率は,ともに上昇しており,形成された 年輪の構造に著しい差が認められた。

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    −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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