(研究資料)

苗木の根の発育に関する一調査法とその結果

表土,心土を使用した事例

佐々朋幸

   要旨

 土壌の性質と根の量的,質的変化の関係を調べるため,写真1,2で示されるように 特殊な植栽床を仕切り板で完全な2区に分割し,一方に関東ローム質の表土を,他方に同質の心土を詰めた。植栽床の中 央部へはそれぞれ1本のスギ2年生苗木を植栽し(模式図参照),表土と心士における根の発達の違いを調べた。この方 法は,同一個体へ根圏環境だけが異なる条件を人為的に作りだし,根に本来備わっている形態的性質をほとんど変える ことなく,根系の拡張について立体的観察を可能にした。
 試験の結果.同一の植物個体でありながら,窒素や燐酸に富む表土中で育った細根と,そうでない心上中でのものと の間に顕著な差異がみられた。すなわち,量的に前者が大であったことは言うまでもないが,質的にも表土中で生育し た根は黒褐色の丈夫なものであるのに対し,他で育ったものは白く柔弱であり,それはあたかも水耕栽培でみられる白 根のようであった。また,前者の養分濃度は後者に比べて高かった。
 同様な傾向は菌根の形成量についてもみられ,表土条件下での量は心士条件下での量と比べて数倍に達していた。ま た,菌根によって吸収・固定される窒素や燐酸の量は土壌中に含有されているそれらの量と深く係っていること,同時 に菌根は細根に比べて土壌中のそれらをかなり多量に吸収かつ濃縮していることが認められた。

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     −林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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