材質育種に関する研究 第V報

岩手植栽試験地のアカマツ家系

材質育種研究班

    研究の目的および経過について

 “アカマツの材質育種に関する 研究”は昭和36年度から林業試験場造林部,林産化学部,木材部(当時)の研究員が材質育種研究 班を編成し,東北支場,東北林木育種場,関西林木育種場などの関係者の協カを得て行って来てい る。
 すでに,この研究報告の第T報,第U報において,材質についての育種を進めるうえでの技術的 な基礎資料を提供するために建築用材,パルプ用材として利用されるアカマツを対象とし,材質上 の選抜基準を検討した結果について報告している。これらの研究は,この一連の研究の前半ともい えるもので,東北試験地(岩手県岩手郡松尾村大字松尾字森前山所在の岩手営林署前森山国有林45 9林班は小班)および関西試験地(広島県芦品郡協和村大字阿字字清六山所在の福山営林署清六山国 有林27林班い小班)からそれぞれ33本および31本の母樹を選定し,形態,成長,材質の調査を行っ た。東北においては96の材質形質,157の形態材質,19の成長形質,また関西においては101の材質 形質,159の形態形質,19の成長形質を取上げ,それぞれの個体内,個体間の変動を求め,さらに各 形質間における相関を求めた。この結果に基づいて,比較的測定容易な材質指標によって多くの材 質指標が推定できる可能性を確かめた。構造用材の材質指標としては枝下高,完満度,幹の通直性, 枝痕の状態,成熟材の年輪幅,晩材率,容積密度数,繊維方向の収縮率など,またパルプ用材とし ては成熟材の年輪幅,晩材率,容積密度数,繊維長などを取上げることを提案した。また,その後 の検討の結果,繊維傾斜度を形質として追加した。
 母樹についての材質の検討を行う一方で,それらの母樹から自然交配および接木により得られた 子供集団を育成し,母樹別の子供集団の材質形質と材質に関連のある成長および形態形質を調査し, これらの形質の遺伝について検討することを計画した。
 上述の計画を実行するため,2か所の植栽試験地を母樹を選定した試験地に近接した地域に求め た。本報告は,その内の一つである岩手試験地(植栽試験地の項参照)に植栽し,58年に間伐を行 い採材した東北および関西試験地産アカマツ家系についての検討結果を述べるものである。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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