電導度による融雪流出の成分分離と融雪流出過程に関する研究

志水俊夫

   要旨

 山地流域において積雪は水資源として重要な部分を担っている。それゆえ融雪期における流出過程を 解明することは,河川水の有効利用をはかる上で非常に重要である。本研究では宝川森林理水試験地における融雪期の流量と水質の観測 結果を利用して,まず電導度と比流量との相互関係から融雪流出ハイドログラフを直接流出成分と地下水流出成分に分離した。次に,両 成分の経時変化と融雪流出水の供給源である対象流域の積雪分布の経時変化を検討することにより,融雪期における流出過程について検 討した。その結果,融雪の進行に伴い流出形態は異なり,融雪期前半では直接流出成分のピークと地下水流出成分のピークは一致してい るが,融雪期後半では直接流出成分のピークは地下水流出成分のピークよりも遅れることが認められた。また,地下水流出成分の全流出 に占める割合は,融雪期の前半の方が後半と比較して大きいことが分かった。これらは積雪域の後退によって各流出成分の河道への到達 時間が変化することによるものと考えられた。

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−森林総合研究所研究報告−
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