樹木の器官・カルス培養の基礎的研究

佐藤 亨

   要旨

 組織培養によるクローン増殖法を数種の樹本に適用し,器官培養とカルス培養によって 幼植物体を得る方法を確立した。
 器官培養においては,まず芽生えの組織器官からの植物体再生を試みた。スギの芽生えの子葉・胚軸と幼芽部分を外植体と して植物体を再生できたが,幼芽部分から得られた植物体数が最高であった。クヌギ堅果芽生えから伸長した上胚軸を外植体 として,初代培養の結果,上胚軸の鱗片葉着生部位からのみ,芽やシュートの発生を認め,継代培養によって堅果当たり平均 400本の植物体が得られた。シラカンバの試験管で育成した幼植物体の葉柄から苗条原基を得るための鉄分は,成木の葉柄から の苗条原基を作成するよりも低濃度でよかった。成木シナミザクラの新梢の培養では,試験管よりも三角フラスコでシュート を多く発生した。成木クヌギの節つき茎軸の初代培養では,培地の種類による開芽伸長の差がみられ,また継代培養では培地 への硫黄の増量によって,シュートのネクロシスを押さえることができた。
 カルス培養では,スギの未熟種子から,クロマツの胚軸及び,ポプラ類の新梢形成層からよくカルスを誘導できた。スギカ ルスから根の発生をみたが,クロマツでは器官再生はみられなかった。ポプラ類のカルスからはよく植物体の再生ができ,継 代培養カルスの植物体再生能カは2.7〜4.9年持続した。そして,カルスの状態で3.5〜8年間保存できた。

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−森林総合研究所研究報告−
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