九州におけるスギ,ヒノキ幼齢木の凍害と防止

高木哲夫

   要旨

 九州地域に多発する若いスギ,ヒノキの造林地における凍害の実態を調べ,凍害の発生 地形並びに発生気象条件などを明らかにするとともに,凍結実験による耐凍性の評価と耐凍性の品種間差,クローン間差を明 らかにした。さらに,これらの知見から凍害防止法を試験的に実行し,若い造林地の凍害防止効果を判定した。九州における 凍害は耐凍性が十分に備わっていない初冬期,及び耐凍性がなくなっていく初春期の低温によって起こり,中部山地,盆地, 台地などで多発した。耐凍性は晩秋期の気温低下に伴って急速に高まり,厳冬期に最大となったのち,初春期に向けて消失し ていく。厳冬期の耐凍性はスギでおよそ-20℃,ヒノキで-25℃,アカマツで-30℃であった。耐凍性に品種間差,クローン間差 があり,オビアカ,メアサ,ヤブクグリが比較的強い品種,高岡署4号が比較的強いクローンであった。凍害の発生は幼齢木の 耐凍性と接地気温の低下に伴う樹体温低下と関係が深かったので,凍害防止として,幼齢木基部の日中の高温化防止が有効で あった。すなわち,植栽地形の選択,下刈の程度をかえる造林地植生の有効利用のほかに,樹下植栽法,マツ類の先行植栽に よる側方混植法あるいは囲み植えなどが凍害防止技術として有効であった。

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−森林総合研究所研究報告−
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