(研究資料)

紀伊半島産ヤチネズミにおける生息環境と腎臓の水分保持力との関連性(英文)

北原英治

   摘要

 最近,三重県尾鷲営林署管内においてヤチネズミによる林木被害が見られるようになり 注目されている。そこで,紀伊半島産ヤチネズミの分布と,それを規制すると思われる水分保持カの一指標としての腎臓構 造について調べた結果,以下のことが分かった。1)ヤチネズミの分布は垂直的には幅広いが,水平的には三重・奈良・和 歌山3県の一部の狭い地域に限られていること,2)その分布は紀伊半島各地での年間雨量の多寡によって影響されており, ヤチネズミは年間3 000oを越す地域では単独で生息し,2 500〜3 000oの地域ではスミスネズミと混棲し,2 000o以下の 地域にはスミスネズミだけが分布していること,3)ヤチネズミ(PMT73.1±2.3,PMA41.3±3.6,n=6)とスミスネズミ (PMT77.7±4.6,PMA48.4±4.9,n=9)との間には水分利用効率(水分保持カ)の一指標である腎臓髄質部の厚さと面積に 差異が認められ(P<0.05),ヤチネズミはスミスネズミに比して水分ストレスに弱いことが明らかとなった。

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−森林総合研究所研究報告−
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