寒冷地帯におけるアカマツ−ヒノキ二層林*の初期保育に関する研究

齋藤勝郎

   要旨

 東北地方においてアカマツの大径材とヒノキの小径材生産を目標とした アカマツ−ヒノキ二層林を造成するため,アカマツ林下にヒノキを植栽する樹下植栽試験地及びアカマツ皆伐 跡地にヒノキを植栽し,その保育過程で侵入してきたアカマツ天然生稚樹を育成し,二層林に誘導するアカマ ツ・ヒノキ同時更新試験地をそれぞれ設定した。この二つの試験地において,13〜15年間にわたり,植栽木の 生育環境及び成長などを調査した。
 アカマツ壮齢林の間伐時の林内相対照度は,およそ40〜70%の範囲にあった。間伐9年後の林内相対照度は, 間伐時より3〜10%減少しただけで,その経年変化は小さかった。樹下植栽試験地の13生育期を経たヒノキの 平均樹高は6.6〜7.3mでアカマツ・ヒノキ同時更新試験地の15生育期を経たヒノキの平均樹高6.3〜6.5mと同等 以上であった。樹下植栽試験地の植生の再生量はアカマツ・ヒノキ同時更新試験地のそれに比べ30〜60%少な く省力化に結びつくと考えられた。ヒノキの枯損をみると,樹下植栽試験地では枯損率が8.8%と低く,その 内訳は活着不良が7.7%,寒風害が1.1%であった。これに対し,皆伐跡地に設定したアカマツ・ヒノキ同時更 新試験地の枯損率は52.4%と高い値を示した。内訳は活着不良13.1%,胴枯型凍害33.7%,寒風害1.3%,雪 害0.3%などで,植栽後4〜5年までに発生した胴枯型凍害がその大部分を占めた。本地域のような寒冷地にお いては胴枯型凍害や寒風害のようないわゆる寒害は皆伐新植地におけるヒノキの不成績造林地の大きな原因 であると考えられた。また,植生の再生量の多い同時更新試験地内に下刈り方法の異なる全刈区,筋刈区,交 互刈区を設け,12生育期を経たヒノキの生育を調べた結果,下刈り作業を最も省力化した筋刈区(樹高3.7m, 胸高直径3.3p)で刈り残しの広葉樹の披圧によりヒノキの生育は極めて劣った。交互刈区(樹高5.1m,胸高 直径6.3p)では,下刈り回数が全刈区の半数にもかかわらず全刈区(樹高4.8m,胸高直径6.3p)と同等以上 の成長を示した。

全文情報(1,113KB)

−森林総合研究所研究報告−
森林総合研究所ホームページへ