ヒノキとクロマツの組織培養条件の検索

石井克明

   要旨

 ヒノキの芽生えからの増殖では,CampbellとDurzanの基本培地にBAやNAAを添加 して,平均150本のシュートを13か月で得ることが可能であった。これらシュートは70%の発根率を示し,高率で植物 体の個体再生ができた。再生個体はパーライト又はバーミキュライト培地に鉢出し後,含水ろ紙で1か月被覆すること により外環境に順化できた。このようにして18か月で一つの芽生えから平均100個体,最大500個体の植物体を得る技 術を開発した。ヒノキ成木からのマイクロプロパゲーションでは,当年生葉条の先端部を外植体とすることにより個 体再生ができた。1葉条より20本程度の不定シュートが得られた。クロマツの成熟胚からの組織培養においては,初代 培養,継代培養,発根処理時ごとに基本培地を変えることにより,8か月の培養で一つの胚より平均9〜13.5(最大31) 本の不定シュート及ぴ発根再生個体を得た。増殖にはサイトカイニンパルス処理や培養中の葉束より新たに葉東芽を 誘導する再増殖法が有効であることが分かった。ザイセンチュウ抵抗性検定済のクロマツの6〜7年生木からの組織培 養では,塩化ベンザルコニウム液やエタノールを用いた比較的効果的な表面殺菌法を開発した。心止め誘導葉束芽を 外植体とし,BA添加の1/2 LePoivre地を用いて,1か月に平均1本の新しい不定シュートを得る増殖法を開発した。安 定的に個体再生するには,発根率の向上が必要であることが分かった。

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−森林総合研究所研究報告−
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