Dryobalanops 属数種の集団遺伝学的研究(英文)

白石 進,LATIFF Norah H.,宮武進,落合幸仁,古越隆信

   摘要

 ロイシンアミノペプチダーゼ(Lap)・アイソザイムのLap 遺伝子を遺伝的指標として用い,ブルネイ国熱帯降雨林の主要樹種であるフタバガキ科(Dipterocarpace aeDryobalanops属の数種について,遺伝的変異,種間の類縁関係,交配様式について調査した。
 まず,Dryobalanops属のなかで最も広く分布するD.aromatica(カプールプリンギ)につい て,ブルネイ全土から3か所の集団を選び,各集団間の対立遺伝子組成を調査した。その結果,ブルネイ本土 の2集団は似た遺伝子組成を示したが,この2集団とテンブロン(Temburong)地域の1集団間では差異が認 められた。
 さらに,Dryobalanops属のD.aromatica,D.lanceolata(カプールパジ),D.rappa (カプールパヤ)の3樹種について同様に対立遺伝子組成を調べた結果,D.aromaticaD.lanceol ataの遺伝子組成は類似していたのに対し,この2樹種とD.rappa間では大きな差異が認められた。 この結果は,これまでの形態分類学的知見と一致した。
 また,D.aromaticaの天然更新稚樹集団を対象として遺伝子型頻度と対立遺伝子頻度を調べた。その 結果,両者間にハーディ・ワインベルク平衡が認められ,稚樹群を形成する個体の大多数は他殖種子に由来し ていることが示唆された。

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−森林総合研究所研究報告−
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