ブルネイ国における Agathis borneensis WARB.のアイソザイム手法による生態遺伝学的研究(英文)

北村系子,YUSOF Mohamad bin Abdul Rahman

   摘要

 Agathis属は東南アジアからニュージーランドにかけての 熱帯低地に生育する針葉樹である。ブルネイ国におけるAgathis borneensis天然林5集団につい てアイソザイムを標識遺伝子として生態遺伝学的研究を行った。分析に際しては,15酵素種17遺伝子座 のアイソザイム遺伝子座を使用した。遺伝的変異性の指標である平均ヘテロ接合体率はH=0.122であった。分集団間の遺伝子多様度はGST=0.140であり,集団 全体の遺伝子多様度は低く分集団間の分化の程度は高いことが明らかになった。これは温帯地域に生育す る針葉樹とは逆の結果である。各集団はハーディ・ワインベルグの平衡を保っていた。バダス保護林で, 成木と天然更新している実生の遺伝子型頻度を比較して,交配様式のパラメータである近交係数の生育段 階による違いを推定した。その結果,成木と実生の間に遺伝子頻度の違いは認められなかった。また,ハ ーディ・ワインベルグ平衡も両生育段階で保たれていた。これらのことからAgathis borneensis は他殖性の樹種であることが示唆された。

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−森林総合研究所研究報告−
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