スギ四倍体の検出と保存

菊池秀夫

要旨

 スギについて1966年から今日まで,天然林,人工林,在来サシキ品種,園芸品種などから遺伝実験素材の収集を行ってきた。これらのスギ収集個体を用いて遺伝実験のための交配を行い,多くの交配家系を育成した。このなかの一部の家系について全個体の体細胞染色体数を調査し,また,多くの家系について外部形態の観察から倍数体と思われる個体の検出を行い体細胞染色体数を調べた。この結果,四倍体46個体及び異数性四倍体3個体を検出した。これら四倍体など49個体についてクローン化してオルテット及びラメートの保存に努め,筑波共同試験地のほか2か所に植栽した。また,この一連の染色体の観察のなかで,三倍体,異数体,混数体並びに正倍数の染色体の一部が認められない個体(染色体欠失)と考えられる個体を観察した。異数体については,染色体数23本が2個体,31本が1個体,41本が1個体,43本が2個体であった。混数体2個体であった。染色体欠失は同一家系から2個体であった。本研究から(1)自然界においてスギ四倍体と多くの三倍体が存在することが想定された。(2)特定地域の林分から倍数体が多く出現することが予想された。(3)特定の二倍体交配親の組み合わせから四倍体と三倍体が多く作出される可能性が考えられた。

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−森林総合研究所研究報告−
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