バライチゴ種子の休眠解除における埋土期間の効果

鈴 木 和 次 郎

要 旨
  西日本に広く分布するバライチゴの種子休眠の適応的な意義と埋土期間の発芽に及ぼす影響を明らかにするための試験を行った。初夏,成熟直後の種子を採取し,直ちに発芽試験を行うとともに,採取種子をシードバックに入れ土中に埋蔵した。埋土した種子は,1,2,5,8か月後に取り出し,それぞれについて,明・暗の光条件と変温・定温の温度条件を組み合わせて,発芽試験を行った。バライチゴの種子は,埋土期間の長短に関わらず,暗条件下,明条件の定温下では,ほとんど発芽しなかった。明条件の変温下における最終発芽率は,埋土期間が長くなるに従って高くなり,8か月後には71%になった。明条件の変温下という最適発芽条件でも発芽しない休眠種子とこの条件でのみ発芽する条件休眠種子の全体に占める割合は,8か月埋土後の翌発芽期で,それぞれ30%と70%であり,非休眠種子はほとんど見られなかった。こうしたことから,バライチゴは,種子散布後も長期に渡って種子の休眠体制を維持し,土壌中に永続的種子バンクを形成,その後の時間的に予測出来ない撹乱によって形成されるセーフサイトでの発芽に適応した種といえる。

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−森林総合研究所研究報告−
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