平成16年9月10日 ―冷温帯落葉樹林によるCO2吸収量の観測継続が困難に― 独立行政法人 森林総合研究所 地球温暖化防止の国際的な取り組みにおいて、森林の二酸化炭素(CO2)吸収量の解明が重要な課題になっている。これを受け、森林総合研究所は、林野庁や山梨県環境科学研究所の協力の下、1999年に全国5カ所(札幌、岩手県安比、富士吉田、京都、熊本県鹿北)の森林に観測タワーを設立し、各森林におけるCO2吸収量の連続観測を4年あまりにわたって継続してきた。研究所は、これら各地点における観測研究を「森林総合研究所フラックスネット(FFPRI FluxNet)」という名称で束ね、国際的な観測ネットワークに参画し、世界の研究者と連携を保ちながら研究を進めている。現在までの観測により、落葉広葉樹林・常緑針葉樹林といった森林のタイプ別、気候区分別に、森林による年間のCO2吸収量や、その年ごとの変動や季節変動の特徴が明らかになりつつある。これらのデータは、日本を含めたアジア域の森林によるCO2吸収量の定量的な評価・予測を可能にするために非常に重要な意味をもち、今後も継続した観測が必要である。 札幌市では、2004年9月8日午前、折から接近していた台風18号の影響で瞬間最大風速50.2m/sを記録する強風に見舞われた。この強風により、札幌市豊平区羊ヶ丘にある森林総合研究所北海道支所構内の実験林の樹木が広範囲にわたって倒れ、そのうちの落葉広葉樹林に設置されていたフラックス観測タワー2基も倒壊するなど、大きな被害がでた(写真)。このため同森林におけるCO2吸収の観測が継続できない状態になった。しかし、上にも述べたとおり、観測の継続は世界的な要請であり、また、台風等の自然災害による攪乱(かくらん)を受けた後、森林がCO2を吸収する能力がどの程度減少し、またその後どのくらいの期間で回復するのかを把握することは、森林によるCO2吸収量の評価・予測を確かにする上で大変重要である。このようなデータは世界的にも少なく、観測が再開されれば世界に先駆けた貴重なデータが得られることになる。そのため、森林総合研究所は、できる限り早急に観測タワーを復旧し、少しでも早く観測を再開するための方策を模索している。 写真 倒壊した観測タワーと下敷きになった観測舎 【問い合わせ先】 研究推進責任者:森林総合研究所 気象環境研究領域 気象研究室 大谷 義一 Tel. 029-873-3211(内線384) 広報担当者:森林総合研究所 企画調整部 研究情報科長 杉村 乾 Tel. 029-873-3211(内線225) 森林総合研究所 北海道支所 研究調整官 北原 英治 Tel. 011-851-4131 |
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