プレスリリース |
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平成17年 6月 7日 |
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三宅島の緑の回復に強い味方現れる! −共生菌を使った技術を活用− |
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独立行政法人 森林総合研究所 | ||||||||
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三宅島では、2000年に起きた噴火の後、植生の回復が急務となっています。その植生回復事業では、以前から治山工事などに使われてきたオオバヤシャブシに大きな期待が寄せられています。森林総合研究所は、オオバヤシャブシ苗の成長を促進させるために、根系と共生する根粒菌フランキアに、菌根菌や根圏に生息するシュードモナス細菌を加えて育ててみました。そうすると、菌を接種しないで育てたオオバヤシャブシに比べて、接種苗は4〜5倍も大きく成長することが明らかになりました。その根は、異なる働きを持つ共生菌を複数取り込むことで、生育を改善することができたと考えられます。 【オオバヤシャブシ】 オオバヤシャブシは本州中部太平洋側に分布するカバノキ科の樹木ですが、放線菌(フランキア菌)の働きを得て根粒1)を形成し、大気中の窒素を固定する能力が高いため、荒廃地を緑化するための肥料木として、全国各地でよく利用されてきました。また、この樹木が固定した窒素は、その後土壌中へ供給されるため、土壌の栄養条件が改善され、植生の遷移2)にも影響すると考えられます。そのため、この樹木は優れた共生体機能を持った先駆樹種3)といえます。 【三宅島噴火被災地の緑化事業計画】 三宅島では2000年に起きた噴火の後、山腹上部は緑を失い、森林が持っている洪水防止、土壌保全などの機能も消失しました。そこで、現在、在来のさまざまな樹種を用いた緑化事業が計画されています。オオバヤシャブシはその一つですが、三宅島では、これまでも火山噴出物の堆積により生じた荒廃地にオオバヤシャブシを植えて、薪炭材などに利用してきました。オオバヤシャブシの生育が改善されると、三宅島の緑化には強い味方となるでしょう。 【接種試験と植生回復への応用】 オオバヤシャブシの根の周りには根粒菌のほかにも樹木の養分や水分の吸収効率を高める菌根菌(Gigaspora margarita)や、無機養分を可溶化する根圏生息性細菌(蛍光性シュードモナス菌、Pseudomonas putida)などが生息していることが知られています。今回、これらの菌に着目し、複数種を組み合わせて接種することで、オオバヤシャブシ苗に対する成長促進効果を調べました。オオバヤシャブシの成長は、菌を接種しないで育てたときに比べて、根粒菌単独で4.0倍、菌根菌をあわせて接種すると4.7倍、さらに根圏細菌を組み合わせると5.0倍に達しました。(図1、図2) このように、オオバヤシャブシは、菌根菌などいろいろな共生菌を組み合わせることで、単に根粒が形成されるだけでなく、養分や水分の吸収効率が高まります。共生菌の組み合わせが緑の大地を復活させる一つの鍵になると考えられます。 本広報の関係論文は、学術誌Journal of Forest Research(Springer出版)第10巻1号(2005年2月)に掲載されました。また、この成果は、三宅島の緑化事業試験において2005年4月から感染苗生産に生かされます。 |
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【用語解説】 1) 根粒 マメ科植物が細菌とともに形成する根粒とオオバヤシャブシやグミなどの樹木が放線菌(フランキア属)とともに形成する根粒があり、いずれも共生することによって窒素固定を発揮する。 2) 遷移 植生がみられないところ、また破壊されたところで植物群落が次第に多様化し、やがて安定した植生へと移り行く様子をいう。 3) 先駆樹種 遷移のはじめに裸地に侵入して定着できる樹木。日当たりを好み、貧栄養条件や乾燥、湿潤に耐え、窒素固定作用をもつものが多い。 |
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【資料】 | ||||||||
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