プレスリリース
   
平成19年3月23日

森林浴がヒトNK(ナチュラル・キラー)細胞を活性化させ、
その持続効果が認められた!

 
日本医科大学 衛生学公衆衛生学教室
独立行政法人 森林総合研究所
課題実施責任者 日本医科大学 李卿講師・川田智之教授


  本研究は平成18年度先端技術を活用した農林水産研究高度化事業ならびに森林セラピー総合プロジェクトの成果の一部である。平成17年度の研究では森林浴がNK細胞内の抗がんタンパク質の増加によってヒトNK活性を上昇させることを世界に先駆けて明らかにした。
  本研究は平成17年度の成果を踏まえて、旅行による影響も考慮し、森林浴によるヒトNK活性への効果をさらに検証するとともに、その持続効果を明らかにすることを目的とした。
  3日間の森林浴により、NK細胞が放出する3種類の抗がんタンパク質、パーフォリン・グランザイム・グラニューライシンがいずれも増加することを再度実証した。NK細胞の機能が高まれば、生体の抗がん能力も高まると考えられている。
  一方、一般的な旅行による免疫能の効果を調べたところ、NK活性等の上昇は見られなかった。したがって、森林滞在によって免疫能が高まったことを実証した。
  さらに、森林浴の1週間後においてもNK活性は45%高いこと、1ヶ月後においても23%高いことを明らかにし、森林浴の免疫能を高める効果には持続性があることを示した。
  本研究の対象者は、都内大手企業等に勤める35-56才の男性社員12名である。測定項目はNK活性、NK細胞数、細胞内の3種類の抗がんタンパク質、尿中ストレスホルモン(アドレナリン)の濃度などである。本研究は日本医科大学の倫理委員会にて承認され、実験の実施に当たっては、全ての被験者から文書でインフォームド・コンセントの手続きを取った。
  森林浴コースは、我が国の森林浴発祥地である長野県上松町・赤沢自然休養林の森林セラピーロードとした。対象者は森林環境中に2泊3日間滞在し、森林浴前後に上記の項目を測定し、以下のことを明らかにした。

 1.森林浴がヒトNK活性を上昇させた(1日目43%、2日目56%)。
  その理由は、以下の通りである。
  1)森林浴が有意にヒトNK細胞数及び細胞内の抗がんタンパク質を増加させた。
  2)森林浴が有意にストレスホルモンを減少させ、ストレスによる免疫抑制を解除させた。
 2.NK活性の上昇において森林浴の持続効果が認められた。
  森林浴の1週間後においてもNK活性は45%高く、さらに1ヶ月後においても23%高かった。
  一方、一般の旅行によるヒトNK活性の上昇は認められなかったため、森林滞在が免疫能を高めることが分かった。


  森林からのフィトンチッドおよび森林浴によるリラックス効果がこの活性化に寄与したと考えられる。
  本研究成果は3月25-28日に大阪で開催される第77回日本衛生学会総会のシンポジウムにて発表される予定である。その際、日本衛生学会総会で「森林医学研究会」を発足する。
 
問合せ先:日本医科大学衛生学公衆衛生学
担当 李 卿(り けい)
Tel  03-3822-2131(内線5259)

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