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平成21年 1月22日 |
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独立行政法人 森林総合研究所 |
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リグニンからエポキシ樹脂の3倍の強度をもつ接着剤を開発 −処理が困難だった林地残材などの有効活用に道筋− |
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概要 |
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問い合わせ先など | ||||||||
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背景 | ||||||||
バイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源)は、大気中のCO2を植物が光合成によって固定したものであり、その利用によってCO2が発生しても大気中のCO2は増加せず、環境にやさしい資源といえます。木質バイオマスの主体は細胞壁成分で、約40%のセルロース、約20〜30%のヘミセルロース、約20〜35%のリグニンで構成されています。この中でセルロースやヘミセルロースは、紙・パルプの原料や甘味料・医薬品などに利用されていますが、リグニンについては、製紙工場で自家発電用燃料として利用される以外は、ほとんどが廃棄され、有効利用の技術が確立されていません。 |
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経緯 | ||||||||
森林総合研究所は、東京農工大学の重原淳孝教授、片山義博教授、長岡技術科学大学の政井英司准教授とともに研究グループを組み、未利用バイオマス資源としてのリグニンを、遺伝子工学技術を適用することで、安定した中間体である2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(PDC)(用語解説参照)に変換する道筋を確立してきました(図1)。今回、得られたPDCをポリマー化(化学反応によって重合させること)することにより、金属同士の接着に効果的な高性能接着剤を製造することに成功しました。 |
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内容・意義 | ||||||||
PDCは、分子内に2つのカルボキシル基をもつことから、典型的な重縮合のためのポリマー原料と考えることができます。また原料のリグニンは自然界に大量に存在するので、汎用プラスチックの出発物質として有望です。そこで、得られたPDCを化学処理して接着性を発現できる分子構造に変換することを試み、最終的にステンレススチール同士の接着で90MPa(=1cm2当たり約900kgの力)に至る高性能接着剤が得られました。この強度は、鉄板(幅8cm、厚さ8mm、長さ15cm)2枚の端面同士を接着したものを橋渡しして、上に人が乗っても破断しないほど強力なものです(写真1、2)。一般のエポキシ接着剤などの接着強度(30MPa程度)と比較すると、およそ3倍の強度となります。 |
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今後の予定・期待 | ||||||||
今後、この技術の実用化に向けて、 産官学連携体制を強化するとともに、一層のコストダウンを図り、既存の接着剤に対する価格競争力をつけることが課題であり、これらの取組みを進めてまいります。 |
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用語解説 | ||||||||
PDC |
![]() 図1 リグニンからのPDCの生産とその利用 |
![]() 写真1 PDCベース接着剤で接着したステンレススチール金属板 |
![]() 写真2 接着力90MPa(上に人が乗っても破断しない) 接着面の大きさ;幅8cm、厚さ8mm、長さ15cm |