プレスリリース
 
平成21年 4月 2日
独立行政法人 森林総合研究所 関西支所
 
現代版里山管理手法をまとめたマニュアル
「里山に入る前に考えること
− 行政およびボランティア等による整備活動のために −」 を発行
 

ポイント
 ・森林総合研究所で進めてきた、里山の保全・整備技術に関する研究の成果から、里山の資源を活用しながら若い林を再生する「現代版里山維持管理手法」についてまとめ、マニュアルを発行しました。

 ・ 里山管理に関わる地方自治体やボランティア等の人々を対象として、里山の機能を十分に引き出すための具体的方策について解説したものです。

 
 

概要
  森林総合研究所では、里山の林が健康な林として持続するように、その維持管理手法について研究してきました。その結果、化石燃料への依存により里山林が50年ほど前から放置されるようになったことから、ナラ枯れやマツ枯れなどの流行病の被害が増え、健康な林として持続しなくなってきたことがわかりました。そこで、研究結果から導き出した、なぜ放置してはいけないのか、何をすればより良い里山になるのかについて解説し、管理の考え方と具体的な手法を提示するための冊子を発行することとなりました。


  URL:http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/satoyama3_200906.pdf (2009年6月 第2刷、リンク削除)
  URL:http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/satoyama3_201002.pdf (2010年2月 第3刷)

  予算:交付金プロジェクト「人と自然のふれあい機能向上を目的とした里山の保全・利活用技術の開発」

 
問い合わせ先など

 独立行政法人 森林総合研究所  関西支所長  藤井智之
 研究推進責任者: 森林総合研究所 関西支所長  藤井智之
 研究担当者  :

森林総合研究所関西支所
  地域研究監    黒田慶子
  森林生態研究グループ 主任研究員  大住克博 
  森林資源管理研究グループ 主任研究員  奥 敬一 
  生物被害研究グループ長       衣浦晴生 
  生物被害研究グループ 主任研究員  高畑義啓 
森林総合研究所多摩森林科学園 生態管理情報担当チーム長  伊東宏樹 
森林総合研究所森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室長  松本和馬 

 広報担当者  : 森林総合研究所関西支所 研究調整監 山田文雄
  Tel:075-611-1201(代)
  Fax:075-611-1207
 
 
背景

  森林に対して、地球温暖化防止やCO2吸収など環境保全に関わる機能や、癒しの効果などの期待が強まっており、里山の保全活動が様々な形で進められています。しかしその機能を十分に引き出すための具体的方策は、ほとんど検討されてきませんでした。森林総合研究所は、里山林が健康な林として持続するように、その維持管理手法について研究してきました。

 
経緯

  「人為的に作られた里山林は、ただ置いておくだけでは良い林に遷移しない」場合が多いことがわかってきました。「森林は伐ると無くなる」、「伐らなければ、森林は自然にあるべき姿に遷移していく」と考えられていますが、実はそうではありません。里山のマツ林や広葉樹林(二次林、雑木林)は20〜30年周期で伐採され、百年以上にわたって薪炭や肥料に利用されてきた場所でした。
  近年は里山の整備活動が様々な方法ですすめられていますが、環境を守りたいという動機が、必ずしも森林の保全に結びついていないのが現状です。再生可能な森林資源であるのに、伐採木を使わずに放置するのは資源の有効利用とはいえず、また、科学的な根拠なしに広葉樹の苗を植えるだけでは、森林の再生は期待できません。里山林を維持するにはその林の成り立ちを理解することが必要です。

 
内容・意義

  里山林(雑木林、二次林)は日本の森林面積の約3割を占めています。この広大な森林を公園のように整備することはできません。もう一度里山林を生活に利用し、資源として循環させることが大事です。新たに植栽するよりも、今ある森林を健康に維持するほうが森林の諸機能を発揮させやすく、少ない費用で済みます。木質資源の現代生活に合わせた有効利用と、地域社会で森林再生を長期的に見守ることが重要です。
  本冊子では、里山林の維持管理の必要性、管理の方法、里山資源の活用法について、地方自治体の職員やボランティア等、里山整備に関わる人々や活動に興味のある人々を対象として、解説しています。

 
今後の予定・期待

  「健康的な住環境を得るには、森林の保全が重要である」ことを今後も広めていきます。それが社会的に認知されるようになれば、地球温暖化防止のような大きな課題の解決に向けて、具体的な行動が期待できると考えています。

 

写真1 冊子の表紙
写真1 冊子の表紙


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