森林生物 マツカレハ細胞質多角体病ウイルス


和名:マツカレハ細胞質多角体病ウイルス
学名:なし
    
分布:日本
 
写真(上):解剖状況。上の虫体内の白い部分がウイルスの増殖した中腸組織,下が健全虫
解剖状況。上の虫体内の白い部分がウイルスの増殖した中腸組織,下が健全虫
説明
このCPVに感染したマツカレハ幼虫は,はじめ食欲が減退し,体が縮小したり,最初液状便を,重症になると白色下痢便を排泄する。嘔吐し腹背部を隆起して静止する。脱肛する場合もある。真皮に病変が起きないので皮膚の色も変わらず破れやすくもならない。この病気の特徴は中腸の円柱細胞の細胞質に多角体が形成されることである。このため中腸は白変している。細胞質に形成された多角体は次第に成長して,その感染細胞は中腸組織から脱落したり,または破壊される。従って重症期の胃液には多角体が混入したり,便と共に排泄される。下痢には多角体が多く含まれるので白色に見える。このウイルスは激しい流行病を起こすものではないが,高密度時には高い死亡率をもたらし,親から子への伝搬も期待できる。このウイルスを製剤化したのがマツケミンという名で林業薬剤として登録されている。この剤はCPVを接種して飼育したマツカレハ幼虫を磨砕濾過して得られたCPV多角体にシリカ粉末と展着剤,乳化剤を加えたものである。この製剤は我が国で初めて登録になったウイルス製剤であるが,現在では製造されていない。

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