森林土壌博物館
 
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森林土壌の調べ方

1. 土壌断面作成方法

2.土壌断面写真撮影

3. 層位の区分と観察ポイント、記載方法


3.層位の区分と観察ポイント、記載方法

1) 層位名の付け方

層位とは断面のなかで堆積状態,土色,構造など肉眼で認識できる特徴が同じあるいは類似しているものがある一定の厚さをもって水平方向に連続している部位をさす。
掘削,調整した断面を注意深く観察し,以下の基準に従って層位区分し,区分した各層位毎に層深以下の項目を記載する。

2) 層位の種類

森林土壌には通常,堆積有機物層と鉱質土層の2種類の層位がある。堆積有機物層はA0層,有機物層,有機質層ともよばれ,地表にあって落葉・落枝などの植物遺体や動物遺体およびそれらの腐朽物が重なり合って層をなしているものである。鉱質土層は無機質層ともよばれ,堆積有機物の下に位置する無機物を主とする部分で,一般に岩石の風化物から構成されている。
林野土壌では層位の名称として堆積有機物層(A0層)についてはL,F,H層の3種類,鉱質土層についてはA,B,C,M,G層の5種類を用いるが、近年溶脱層をEとし、6種類とすることが多い。

3) 層位を識別する特徴

(1) 堆積有機物層の層位

L;新しい植物遺体で,あまり分解されておらず原形の大半をとどめている層位。
F;分解が進み植物遺体の原形が崩れ破片や屑状になってはいるが,まだ肉眼で植物組織を識別できる層位。
H;分解がさらに進み大部分が数mm以下の微細片となり,乾燥土壌では粉状,湿潤土壌ではグリス状の層位。

(2) 鉱質土層の層位

A;堆積有機物層の直下にある腐植に富む暗色の層位。動植物遺体の分解により生成された腐植が集積し,暗褐色を呈するに至った最表層の層位。ただし,表層にありながら,腐植の集積が不十分なため,色調が明るく,構造の発達も不良で,A層と呼ぶには不十分な層位は(A)とする。
E;溶脱層。有機酸や表層還元などの作用により鉄が失われて灰白色を呈するようになった層位。これは従前,ポドゾルにおいてA2層と命名していた層である。
B;A層あるいはE層の下位にある腐植に乏しく明るい色調の層位。母材の風化により生成された鉄化合物により,赤褐〜褐〜黄褐色を呈するに至った腐植に乏しい層位。
C;土壌の母材層,基層。一般に彩度が低く,比較的粗粒で,石礫の含有も多い層位。
M;菌糸網層,外生菌根の菌糸束やその遺体が集積して出来た灰白色・海綿状の層位。
G;停滞する地下水のために土壌が還元状態になり,鉄やマンガンが還元されて灰白色を呈するに至った層位。

(3)付加記号

特定の土壌あるいは土壌化を現す鉱質土層の層位には付加記号をつけて区別する。
g;季節的な停滞水により酸化と還元が繰り返されて形成された層位。偽似グライ化。
h;ポドゾルにおいて多量の腐植の移動集積により暗黒色を呈するに至った層位。
i;ポドゾルにおいて遊離酸化鉄の集積により赤褐〜暗褐色を呈するに至った層位。

(4) 層位記載要件

断面に層位の特徴を備えた部分が厚さ1cm以上あり,水平方向に連続している場合に層位として記載する。ただし,ポドゾルの鉄盤層や火山放出物など上下部位との境界が明瞭である場合は厚さ1cm未満でも層位として区別して記載する。

(5) 層位の細分

堆積有機物層では分解程度の違い,鉱質土層では土色,構造の発達程度,堅密度,石礫や根の量などの違いにより層位を深さ方向に肉眼で区分できる場合は,アラビア数字の接尾辞を付加して細分する。数字は浅い方の層から順に付加する。
  記載例 A1, A2, B1, B2 (A層とB層を細分した場合)

(6) 中間的な層位の名称

ある層とある層の間にあり,両方の特徴を示しどちらとも判断できない場合は両方の層位記号をハイフン"−"で結んで,層位名とする。一方の特徴が強く認められる場合は,弱い方の層位記号に括弧"( )"をつける。
  記載例1 A-B;A層とB層の中間で,どちらとも判断できない。
  記載例2 (A)-B;A層とB層の中間的な層で,B層の特徴が強く認められる。
  記載例3 A-(B);A層とB層の中間的な層で,A層の特徴が強く認められる。

(7) 母材が不連続になっている場合の層位の名称

土壌の下方に生成年代を異にする層が出現した場合,あるいは火山灰等火山放出物が数層にわたって堆積している場合には,アラビア数字の接頭辞を付加して区別する。
  記載例 A/B1/B2/2A/2C

4) 層深

鉱質土層の最上端を基準(0cm)とし,堆積有機物層では各層の上端の高さを,鉱質土層では各層の下端の深さをcm単位で記入する。波状の層界の時は、最も浅い部分と深い部分の層深を記載する。
  記載例:26/32cm  右のB層の層深はx/y cm

5) 層界

下の層への推移状態を下の層との境界部の形状とその明瞭度により記載する。

(1) 境界部分の形状

平坦
波状
不規則
不連続

(2) 境界部の明瞭度

明瞭(境界部の幅が3cm以下)
判然(境界部の幅が3cmから5cmの時)
漸変(境界部の幅が5cm以上)
  記載例 平坦・明瞭,不規則・漸変

6) 土色

各層位の中で最も代表的な色調の部分を土色帖の色片と対比させて色を決める。
まず色相を決め,次に明度および彩度を決めてマンセル表色記号で記入する。調査票への記入は色相 明度/彩度の順とする。
  記載例 7.5YR3/4

7) 石礫率

石礫全体が層位面に占める面積割合を石礫率とする。土色帖の面積割合を参考に%単位で記入する。面積割合が10%以上の場合は,10%単位で記入する。

8) 石礫

土壌中にある直径2mm以上の鉱物質粒子を石礫として,断面各層に現れた石礫を風化程度,形状,および大きさによって区分し,大きさ区分毎の石礫量を評価して記入する。

(1) 石礫の風化程度

未風化;ほとんど風化していないで新鮮なもの
半腐朽;多少風化変質しているがなお堅硬なもの
腐朽;岩石の外形を保持しているが容易に崩壊するもの

(2) 石礫の形状

角礫;鋭い稜角があるもの
半角礫;やや角張った稜角があるもの
円礫;丸みをおびたもの

(3) 石礫の大きさ(長径)

細礫;0.2cm以上1cm未満
小礫;1cm以上 5cm未満
中礫;5cm以上10cm未満
大礫;10cm以上20cm未満
巨礫;20cm以上

(4) 石礫量

石礫量は層位内における面積割合とし,土色帖の面積割合を参考に%単位で記入する。面積割合が10%以上の場合は,10%単位で記入する。
  記載例 半腐朽半角中礫10%
     (風化程度;半腐朽,形状;半角,大きさ;中サイズの石礫が断面の10%を占めている。)

9) 土性

各層位から土塊を採取しよく湿らせ,親指と人差指の間で静かにこねて,砂のまじり具合や粘土のねばり具合などの感触により判定し,以下の区分により記入する。
S(砂土);ほとんど砂ばかりの感じのもの。
SL(砂質壌土);ほぼ1/3〜2/3の砂があるもの。
L(壌土);砂が少し(1/3以下)感じられるもの。
SiL(微砂質壌土);砂はほとんどなく,粘り気のない粘土が大部分を占めるような感触。
CL(埴質壌土);粘り気のある粘土に砂を少し感じるもの。
C(埴土);粘り気のある粘土が大部分のもの。
HC(重埴土);埴土のなかでも粘土が非常に多いと感じられるもの。
G(石礫土);大部分が礫からなるもの

10) 構造

各層位から土塊を採取し,軽く力を加えて土塊を割りながら調べる。構造とは,比較的弱い力で離れ,砕けた塊の形や大きさに一様性が認められ,しかもその表面につやあるいはそれらしいものが認められる土粒子のかたまりをさす。
構造の種類とその発達程度を記載する。1層位に複数の構造がみられる場合には,主たる構造(発達程度が強いもの)を先に記載する。構造の種類の記載には略号(gr, bk など)を用いてよい。

(1) 構造の種類

細粒状構造(l.gr; loose granular);粉状や細かな粒状の土粒が菌糸束でつづられた状態のもの。
粒状構造(gr; granular);比較的小型(2〜5mm程度)で丸みがあり堅くてち密なもの。指でつぶすとかなり抵抗を感じる。
堅果状構造(n; nutty);稜角およびつやのある面が比較的はっきりした塊状構造で,内容はち密で,1〜3cmぐらいの大きさのもの。
塊状構造(bk; blocky);比較的丸みがあり,表面のつやは弱く,内容はそれほどち密ではなくて,比較的大型(一般に1cm以上)のもの。
団粒状構造(cr; crumb);水分に富み軟らかい膨軟な組織をもった小粒(数mm程度)の粒状構造で,指で容易につぶれるもの。
板状構造(pl; platy);平板状に発達し,ほぼ水平に配列しているもの。森林土壌ではまれ。
柱状構造(pr; prismatic);垂直に長く発達し,柱状の形状をもつもの。稜角の鋭いものと丸いものがある。森林土壌ではまれ。
単粒状(sg; single grain);各粒子がバラバラで,互いにくっつきあっていないもの。
カベ状(m; massive);土層全体が堅密に凝集し,一定の構造を認めることができないもの。

(2) 構造の発達程度

弱度;構造をかろうじて識別できる。
中度;構造がやや明瞭に識別できる。
強度;構造がきわめて明瞭で顕著に識別できる。
  記載例 中度bk(塊状構造が中度に発達),弱度gr

11) 堅密度

断面を指で押して,面のへこみかたや指への抵抗から堅密度を判定して記入する。
堅密度の判定区分は以下の6つとする。
すこぶるしょう;土粒が単独で分離,ほとんど結合力のないもの。
しょう;土粒の結合がゆるく土塊が容易に崩れ,指頭が容易に断面貫入するもの。
;土粒は比較的密に結合しているが,押すと指痕が残るもの。
;土粒が密に結合し,強く押すと指痕が残るもの。
すこぶる堅;土粒が密に結合し,強く押しても指痕ができないもの。
固結;かろうじてコテが入るもの。

なお,山中式土壌硬度計で計測した時は,下の区分に従って記入する。(出典:真下1973.森林立地 15(1):22-24の表−2)
山中式硬度計mm 堅密度区分
 0〜8 しょう
 9〜13 軟
 14〜17 やや堅
 18〜21 堅
 22〜25 すこぶる堅
 26〜30 固結

12) 水湿状態

土壌を掌で握るか指先に挟んで押し,手や指の湿り具合から区分して記入する。
水湿状態の区分は以下の5つとする。
;土壌を強く握っても手に湿気が残らない。
;土壌を握ると手に湿気が残る。
湿;親指と人差指の間で押すと水が滲みでる。
多湿;土壌を握ると水滴が落ちる。
過湿;土壌を手にとると,自然に水滴が滴る。

13) 根

断面に現れた根の量を種類別に評価して記入する。

(1) 根の種類

草本
木本
腐根に区別する。

(2) 根直径

木本の根は直径により次の3つに区分する。
;直径2mm未満
;直径2〜20mm
;直径20mm以上。
(3) 根の量
量は面積当たりの本数(10cm四方に現れた本数)により,次の5つに区分する。
なし;0本
まれ;1本以上20本未満
あり;20本以上50本未満
含む;50本以上200本未満
富む;200本以上。
  記載例 木本・細あり,太まれ,草本含む,腐根まれ

14) その他

(1) 礫や地下水が出現し掘削が困難となり深さ1m未満で掘削を終了した場合に,掘削深度とその理由(礫の大きさ,地下水出現など)を記入する。
(2) 記載項目以外で調査中に気づいた事項を記入する。
例 菌糸(束),溶脱,集積,斑紋,結核(塊),ミミズ,アリなどの土壌動物の活動やその痕跡,炭化物,湧水
      
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