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プレスリリース

2021年6月10日

横浜国立大学
森林総合研究所
東京大学生産技術研究所

生物多様性が気候変動問題の解決の鍵となる
Biodiversity-productivity relationships are key to nature-based climate solutions

ポイント

  • 生物多様性が森林の炭素吸収源としての機能に果たす役割を定量化しました。
  • 地球温暖化を防ぎ、樹木多様性を保全できれば、森林の担う炭素貯留の役割も保全でき、結果として、気候安定化をさらに促進できることがわかりました。
  • 生物多様性保全にともなう「炭素の社会的費用*用語解説」を評価した結果、温暖化による将来の経済的損失が大きいと予測される国ほど、生物多様性保全による経済的損失の回避効果が大きいことがわかりました。

研究概要

横浜国立大学の森章教授が主導し、森林総合研究所、東京大学生産技術研究所、そして国外10大学等研究機関が参画する国際研究グループは、生物多様性と気候変動の問題の相互依存性を定量化した論文を発表しました。地球温暖化を防ぐことで生物多様性を保全できれば、生物多様性による炭素吸収が進み、気候の安定化をさらに促進できることが分かりました。この気候安定化と多様性保全の両者促進の利益の経済評価も実施し、今後の国際政策における両者間の良い関係性(安定化フィードバック)に注視することの重要性を強調しました。
本研究成果は、国際科学雑誌「Nature Climate Change」(2021年6月4日付)に掲載されました。

<発表雑誌>

雑誌名:Nature Climate Change, 2021年6月4日

オンライン版:https://rdcu.be/clSoC

論文題目:Biodiversity-productivity relationships are key to nature-based climate solutions

論文著者:Akira S Mori, Laura E Dee, Andrew Gonzalez, Haruka Ohashi, Jane Cowles, Alexandra J Wright, Michel Loreau, Yann Hautier, Tim Newbold, Peter B Reich, Tetsuya Matsui, Wataru Takeuchi, Kei-ichi Okada, Rupert Seidl, Forest Isbell

研究成果

森林は、光合成により大気中から二酸化炭素を吸収し、有機物として固定する「一次生産」の機能を持っています。とくに、多種多様な樹木から構成される自然度の高い森林は、この一次生産を介して、高い炭素吸収能力を持ちます。しかし、今後地球温暖化が進行し、森林を構成する樹木の多様性が低下してしまうと、森林のもつ炭素吸収源としての機能が低下してしまう危険性があります(図の赤の矢印)。このように、生物多様性と気候変動の問題の相互依存性の評価が喫緊の課題となっています。そこで本研究では、複数の気候変動に関するシナリオに基づいて、将来の樹木の多様性の変化を予測し、その結果として生じる森林の炭素吸収機能の変化を地球規模で評価しました。
解析の結果、地球温暖化を防ぎ、樹木の多様性の損失を回避できた場合には、将来予測される森林の炭素吸収機能の損失の9~39%を回避できることが分かりました。この結果は、地球温暖化を防ぎ樹木多様性の損失を回避すれば、森林の炭素吸収機能が維持されることで温暖化の抑制につながる、という気候安定化の好循環メカニズムを示しています(図の緑の矢印)。
本研究ではさらに、生物多様性の保全による温暖化の抑制がもたらす経済的な効果について、「炭素の社会的費用*用語解説」という指標を用いて評価しました。その結果、生物多様性の保全にともなう温暖化の抑制が社会にもたらす経済効果は、国によって大きく異なることがわかりました。とくに、温暖化がより大きな経済的損失をもたらす恐れのある国ほど、生物多様性保全を介した温暖化の抑制により、この経済的損失を回避できることがわかりました(図)。このことは、気候安定化と生物多様性保全の努力は、社会経済的なコベネフィットが大きいといった、両者の望ましい相乗効果を示しています。

 生物多様性の保全による温暖化の抑制がもたらす経済的な効果を示す図

今後の展開

現在、温室効果ガス吸収を目的とした森林再生、植林プログラムが、国際政策や経済の枠組みで強く推進されています。本研究の結果を鑑みると、これらの社会の枠組みでは、これまで以上に「生物多様性の役割」を注視することが求められます。見いだされた知見は、生物多様性がどれほど地球上の炭素循環に関わりがあるのかについて知り、将来的な気候変動予測の精度を高めることにも貢献すると期待されます。

用語解説

炭素の社会的費用】炭素1トンが大気中に追加で排出された時にもたらされる経済被害額(元に戻る

*当研究は、市村清新技術財団地球環境研究助成、環境研究総合推進費、アメリカ国立科学財団などの支援を得て、実施されました。

 

 

お問い合わせ

研究担当者:
横浜国立大大学院 環境情報研究院 森 章
森林総合研究所 野生動物研究領域鳥獣生態研究室 大橋 春香
東京大学生産技術研究所 竹内 渉

広報担当者:
横浜国立大学 総務企画部学長室広報・渉外係
Tel:045-339-3027
E-mail:press@ynu.ac.jp

森林総合研究所 企画部広報普及科広報係
Tel:029-829-8372
E-mail:kouho@ffpri.affrc.go.jp

東京大学生産技術研究所 広報室
Tel:03-5452-6738
E-mail:pro@iis.u-tokyo.ac.jp


 

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所属課室:企画部広報普及科

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