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プレスリリース

2022年5月19日

国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所

外来害虫クビアカツヤカミキリは侵入地域間で遺伝的に異なる
―複数回の侵入によって急速に分布が広域化―

ポイント

  • クビアカツヤカミキリは海外から持ち込まれた外来の樹木害虫で、幼虫がサクラやモモなどの幹を食害し、被害が深刻になると木を枯死させることがあります。
  • 国内の主な分布地域間で、クビアカツヤカミキリは遺伝的に異なることがわかりました。
  • 様々な地域に別々に持ち込まれたことで、クビアカツヤカミキリは急速に国内での分布が広域化したと考えられます。
  • 外来害虫のカミキリムシ類の対策として、さらなる侵入への警戒が必要です。

概要

国⽴研究開発法⼈森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、日本各地で採集されたクビアカツヤカミキリのミトコンドリアDNA*1について遺伝子解析を行い、主な分布地域間で本種が遺伝的に異なっていることを明らかにしました。クビアカツヤカミキリは外来の樹木害虫で、幼虫がサクラやモモなどの幹を食害し、多数が穿孔すると木を枯死させることがあります。2012年に本種による樹木被害が国内で初めて確認されて以降、10年間で本州、四国の様々な地域で分布が確認されるようになりました。今回の結果から、この急速な分布の広域化は国内各地にクビアカツヤカミキリが別々に持ち込まれたことによって起こったことがわかりました。本種が国内の様々な地域に別々に侵入したことをふまえて、今後の対策を検討することが必要だと考えます。
本研究成果は、2022年2⽉21⽇にInsects誌でオンライン公開されました。

背景

クビアカツヤカミキリAromia bungii(コウチュウ目カミキリムシ科)は、サクラやモモなどのバラ科樹木を食害する外来の害虫です(写真)。本種の幼虫は樹木の内部を食い荒らし、樹木を弱らせます。本種による被害が深刻な地域では、サクラ並木やモモの果樹園で枯死があいつぎ、社会問題になっています。本種は、愛知県で2012年にはじめて樹木への加害が確認されて以降、この10年間で本州・四国の様々な地域で分布が確認されるようになりました。本種の分布拡大を予測し被害拡散を防ぐには、なぜこのように急速な分布の広域化が起こったかを知る必要があります。外来種における分布拡大のプロセスを解明するために、ミトコンドリアDNAの遺伝子解析が主要な方法として用いられます。地域間で遺伝的に同じか違うかで、国内に持ち込まれたのは1回でそのあとに長距離を移動して拡がったのか、それぞれの地域で別々に持ち込まれたのかを知ることができます。

バラ科樹木を食害する外来の害虫(左、成虫)(右、幼虫)の写真
写真 クビアカツヤカミキリの成虫(左)と幼虫(右)。
クビアカツヤカミキリの幼虫は、サクラやモモなどのバラ科樹木の内部を食い荒らす。

内容

クビアカツヤカミキリの侵入が確認されている埼玉・群馬・栃木・茨城県境部、埼玉南部、東京西部、愛知西部、大阪南部、徳島北部の6つの地域からクビアカツヤカミキリ120個体を採集し、ミトコンドリアDNAの一部分の塩基配列を解析しました。その結果、国内のクビアカツヤカミキリは侵入地域間で遺伝的に異なることがわかりました(図)。各地域でみつかった遺伝子型は、埼玉・群馬・栃木・茨城県境部と東京西部で同じ型があった以外は、すべての地域間で異なっていました。
この結果から、クビアカツヤカミキリは国内の色々な地域に別々に持ち込まれたことで、急速に分布が広域化したと考えられます。

埼玉・群馬・栃木・茨城県境部、埼玉南部、東京西部、愛知西部、大阪南部、徳島北部の6つの地域から120個体のクビアカツヤカミキリを採集、DNA解析し、侵入地域間で遺伝的に異なることを示す図
図 日本国内のクビアカツヤカミキリが侵入した各地域における本種の遺伝子型の構成割合。
地域間でみつかった遺伝子型が異なる。

今後の展開

日本では近年、クビアカツヤカミキリに加えてツヤハダゴマダラカミキリ Anoplophora glabripennis やサビイロクワカミキリ Apriona swainsoni といった他の外来のカミキリムシ類による樹木被害も相次いでみつかっています。クビアカツヤカミキリを含め外来の樹木害虫による被害拡大を防ぐためには、被害地における防除だけでなく、さらなる侵入を防ぐための水際対策の強化も重要だといえます。

論文

タイトル:Genetic differences among established populations of Aromia bungii (Faldermann, 1835) (Coleoptera: Cerambycidae) in Japan: suggestion of multiple introductions

著者:Shigeaki Tamura, Etsuko Shoda-Kagaya

掲載誌:Insects 2022, 13(2), 217(2022年2月21日オンライン公開)

URL:https://doi.org/10.3390/insects13020217

研究費:農研機構生研支援センター イノベーション創出強化研究推進事業「30023C」、文部科学省科学研究費補助金「15K07500」

用語解説

*1 ミトコンドリアDNA
真核生物の細胞小器官であるミトコンドリアの中に存在するDNA。すべての子に母親のみから遺伝する。その塩基配列には同じ種の個体間でばらつきがあることから外来種の起源の分析に用いられる。(元に戻る

 

 

お問い合わせ

研究担当者:
森林総合研究所 森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室 研究員 田村繁明

広報担当者:
森林総合研究所 企画部広報普及科広報係
Tel: 029-829-8372
E-mail: kouho@ffpri.affrc.go.jp


 

 

 

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