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更新日:2012年7月11日

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ニホンリスの貯食行動によるオニグルミの更新

問題名:生産目標に対応した施業技術の向上と機械化による作業技術の体系化

担当:多摩森林科学園森林生物研究室 林典子・新島渓子
多摩森林科学園樹木研究室 勝木俊雄・横山敏孝

背景と目的

リスは木の実を貯え,あとで食べる“貯食”という習性をもつ。しかし,貯食される場所,貯食されたもののうちどれだけが食べ残され発芽するのか,などを調査することは困難であった。この研究では,リスが運んだ種子の位置を知る新しい手法を開発し,種子がどのようなところに貯食され,どれだけ食べ残されるかを自然環境下で調べた。また,実生の位置を調べることにより,森林の更新に及ぼすリスの役割を明らかにした。

成果

小型の無線発信機(本体約2g)を木の実に付け,運ばれた位置を受信機で探索したところ,たいへん有効であることが分かった。この方法を,ニホンリスによって貯食されるオニグルミの種子に適用したところ.以下の点が明らかになった。

  1. ニホンリスはオニグルミ種子を傾斜の山側に持ち運ぶ傾向がある。
  2. 種子は地面の落葉の下や,樹上の枝の聞に貯食された(口絵写真(JPG:187KB))。貯食場所は母樹から 15m以内が多いが,1~168mと変異が大きい(図1)。
  3. 秋にリスは156個のクルミを運んだが,このうち42%はすぐに食べ,58%は貯食した(地面に47個,樹上に44個)。このうち39%(61個)は後日リスが食べ,12%(19個)はアカネズミが盗んだ。樹上に貯食したもののうち8 個は落下した。結局,7%(樹上から落下した 8個と地面の3個)は5月まで地上に放置され, 発芽の機会を持った(図2)。

次に,オニグルミの実生の位置を調査した(図3)。160m×80mの調査地内に,発芽直後から 6年たった苗木まで52個体が観察された。母樹から実生の距離は最大105m であった。また,実生は樹から離れた山側に多く(図3 右下),リスによる種子の運搬がオニグルミの更新にかかわっていることが示された。

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図1 ニホンリスによって貯食されたオニグルミ種子の運搬距離
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図2 ニホンリスによって持ち出されたオニグルミ種子の貯食及び消費過程(数字はクルミの個数)
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図3 オニグルミの実生と母樹の位置

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