研究紹介 > 刊行物 > 研究成果選集 > 平成6年度 研究成果選集 1994 > スギ暗色枝枯病による材の変色の被害実態

更新日:2012年7月11日

ここから本文です。

スギ暗色枝枯病による材の変色の被害実態

問題名:暖温帯・亜熱帯地域の森林管理技術の高度化

担当:九州支所樹病研究室 河辺祐嗣

背景と目的

近年指向される高品質材生産の阻害要因として,病虫獣害等の生物的要因による材の変色や腐朽等の材質劣化被害が問題になっている。スギ暗色枝枯病は従来枝枯れと幹部胴枯れ被害を引き起こす病害としてとらえられてきたが,近年加えて材の変色被害を引き起こす材質劣化病害のーつとして新たに注目されている。そこで,九州地域における暗色枝枯病による材の変色被害の実態を明らかにした。

成果

調査木(28年生)84本の暗色枝枯病被害をまとめると,樹幹部の胴枯れ病斑の平均長は20.3cm (胴枯れに伴って材の変色が発生するが,材の変色長はさらに長い)で(図1),特定方位に発生する傾向はなかった。調査木1本の暗色枝枯病の,罹病歴では,材の変色は樹齢の増加に伴って樹幹の下方から上方に推移しながら連年発生し,樹高15.3mのうち地上高0.5~12mの範囲にほぼ連続して分布していた(図2)。各個の変色部からの分離試験では発生後4,5年以内の比較的新しい材の変色部からだけ暗色枝枯病菌が分離され,それ以上経過した変色部からは暗色枝枯病菌が分離されず他の糸状菌が代わって分離された。各個の材の変色の発生状況をみると,心材化していない樹幹の上方部位では発生後数年以内の典型的な暗色枝枯病による材の変色が認められた(口絵写真1(JPG:91KB))。しかし,心材化が進んだ中間から下方樹幹部位では材の変色痕が心材内に含まれるようになり(口絵写真2(JPG:85KB)),この場合当初発生した材の変色痕の周囲に黒い変色が広がって心材が黒く変色し,いわゆる黒心化被害となっていた。樹幹木部に多数形成され蓄積される暗色枝枯病の被害は単なる一部材の変色被害にとどまらず黒心化被害の発生要因にもなっていることが明らかになった。

オビスギ系スギ品種15種についての暗色枝枯病の被害調査では,枝枯れ及び材の変色被害はともにクロ(オビ),ヒダリマキ,ミゾロギなどの特定の品種に被害が集中的に発生する傾向が認められ(図3),罹病性と品種との関連が強いことが明らかになった。

p40 fig1
図1 暗色枝枯病による胴枯れ病斑長
p40 fig2
図2 暗色枝枯病による材の変色の発生樹齢と地上高
p40 fig3
図3 スギ品種ごとの傷癒痕数と材の変色数

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科編集刊行係

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

電話番号:029-829-8373

FAX番号:029-873-0844

Email:kanko@ffpri.affrc.go.jp