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更新日:2012年7月18日

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森林火災が発生する危険度の評価には、落葉層の含水率推定が重要である

関西支所 森林環境グループ 玉井 幸治、深山 貴文
  大気–森林系チーム 後藤 義明
気象環境研究領域 気象害・防災林研究室 吉武 孝

背景と目的

森林火災では、林床に堆積している落葉などが最初に燃え始め、次第に樹木の幹や枝に付いている葉に燃え移る。このことから、森林火災の発生危険度の評価には、落葉層含水率を判定することが重要であると考える。現在、気象観測データに基づいて、「いつ森林火災が発生しやすいのか」の判定を行っているが、具体的に「どこの森林が危険であるのか」を判定することはできない。

そこで森林の状態に関する情報と気象観測データに基づいて、林分別に落葉層含水率を推定することで「いつ、どこの森林が危険であるのか」を判定することが可能になり、森林利用の制限など、効率的な対策を講じることが可能になると期待される。そのためにはまず、林内気象の観測データから落葉層含水率を推定するモデルを開発する必要があり、京都府南部の落葉樹林と常緑・落葉混交林を対象に、林内日射量と降水量データから落葉層含水率を推定するモデルの開発を行った。

成果

モデルの概要を図1に示した。落葉層をバケツに仮想すると、バケツに溜まっている水量が落葉層の含水率に相当し、林床に降る雨は一旦バケツに溜まる。バケツからあふれた水は、鉱質土壌へと流下する。一方、林内日射量に応じて水分は蒸発し、その分、バケツの中の水量は減少する。

蒸発量と日射量の関係を求めるため落葉層の含水率を4段階に分け室内実験を行った結果、蒸発量と日射量には比例関係が成立することがわかった(図2a)。さらに比例関係式の傾きは落葉層の含水率とともに増加し、含水率が180%以上になると、傾きは一定となった(図2b)。この関係を数式で示すと次のようになる。
y=(1.02×10^{-5}\theta-1.3×10^{-5})S if(theta<180%), y=(1.7×10^{-4})S if(180%<=\theta)
y:蒸発量(mm)、S:日射量(kJ m-2)、θ:前の計算時間の落葉層含水率(%)

この式で計算されたyの値に相当する含水率をθから減じることにより、その時間における新たな含水率θの値を算出する。

このモデルを用いて、落葉樹林(京都府相楽郡山城町北谷国有林)と常緑・落葉樹混交林(京都市銀閣寺国有林)の落葉層含水率の推定計算を行った。森林の混み具合を示す胸高断面積合計は、北谷国有林では常緑樹6.29m2ha-1、落葉樹で13.31m2ha-1、銀閣寺国有林では常緑樹15.82m2ha-1、落葉樹12.46m2ha-1でした。林内の明るさと関係する開空度は、北谷国有林では夏に15.0%、冬に50%、銀閣寺国有林では夏に13.3%、冬に23.0%であった。

経験的に落葉層の含水率が20%以上の場合には燃えないと言われているので、含水率が20%以下となる日の発生割合を月別に計算し(図3a)その結果、両方の森林とも含水率が20%以下となる日の発生割合は春に多いことがわかった。これは京都府南部・奈良県北部で森林火災発生件数が多い時期と一致し(図3b)、開発されたモデルの有効性を意味する。また常緑・落葉樹混交林では、春以外には含水率が20%以下となる日は皆無であったのに対し、落葉樹林では1、11、12月を除いて1年中含水率が20%以下と推定される日があった。このことから、林相のタイプによって林野火災の発生危険度が異なり、開発されたモデルはそれを判定することができることがわかる。

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図1 落葉層含水率推定モデルの概要

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図2a 日射量と蒸発量の比例関係

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図2b 日射量–蒸発量回帰式と落葉層の含水率との関係

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図3a 落葉層含水率が20%以下となる日の発生率(モデル計算結果)

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図3b 京都府南部・奈良県北部における月別森林火災発生件数

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