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更新日:2012年7月18日

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広域デジタルマップで森林資源の移り変わりを見る

四国支所 流域森林保全研究グループ 平田 泰雅、小谷 英司、都築 伸行
林業経営・政策研究領域 林業システム研究室 岡 裕泰

背景と目的

近年の目覚ましいコンピュータ技術の発達に伴い、森林資源及びその生育する環境に関する各種の情報が空間的なデジタルデータとして取り扱えるようになった。すなわち、これまで個々に作成されてきたデータが同一の地理座標を持つ地理情報として、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)の上で統合的に解釈できるようになったため、個別の情報として取り扱われてきたデータ相互の関係解析が可能となったのである。本研究の目的は、既存の統計資料や地形モデルを用いて、広域における森林資源の推移を視覚的に表現し、森林資源の推移と地形条件や人口の増減との関係を明らかにすることである。

成果

急峻な山岳地域で人工林化が進んでいる四国地方の森林を対象に、林業センサス及び地形データを用い、市町村ごとの森林資源の推移を地形要因と人口の増減と関連づけて調べた。

まず、国土地理院の数値地図のうち50mメッシュの標高データ(図1)から、各メッシュにおける傾斜角を算出した。次に、国土数値情報の行政界データによりメッシュごとの地形データを市町村ごとに集計し、各市町村における平均標高、平均傾斜角(図2)、最大標高差を算出した。その結果、剣山及び石鎚山周辺の市町村では、最大標高差が1500m以上であり、平均傾斜角も25度を超えていることが明らかになった。四国地方の森林分布は一般に急峻な地形条件と結びつけて考えられるが、四国内でも大きな地域差があることが視覚的に明らかになった。

次に、1960年、1970年、1980年、1990年の林業センサスデータを用いて、市町村ごとの森林資源と人口の推移を明らかにした。なお、市町村の一部ではこの期間中に合併が行われたため、1990年時点での市町村界を基準に解析した。林業センサスから各市町村における時系列での林野率、人工林率、及び森林に影響を及ぼす人間活動の指標となる人口密度を算出し、その推移を図化した。その結果、1960年から1990年にかけて高知県内の市町村ではやや林野率が上昇し、逆に瀬戸内海側の地域では減少傾向にあることが明らかになった。このうち人工林については、この期間に香川県及び各県の県庁所在地の市とその周辺を除き、急激に人工林化の進んだことが明らかであり(図3)、これらの地域は図2中の地形が急峻な地域と一致する。これらを10年ごとの推移で見ていくと、それぞれの地域における森林の増加・減少傾向は、1960年から1970年にかけて大きく推移しており、1980年から1990年にかけてはほぼ横ばいであった。これに対して、人工林率は1960年から1970年を経て1980年に至るまで、瀬戸内海に近い一部の地域を除いて全体的に急激な増加傾向にあったが、1980年から1990年にかけては逆に約半数の市町村で減少傾向が認められた(図4)。こうした傾向はこの期間における人口密度の推移と非常に高い負の相関を示している。以上のことから、四国地方では特に1960年から1980年にかけて、急峻な山岳地域で人口流失が見られる一方、急激に人工林化の進んだことが明らかになった。

森林資源の保全を考える場合には、流域圏をひとつの単位として、それを取り巻く人の動きも含めて検討する必要がある。本研究により得られた結果は、流域森林保全を考える際の重要な基礎データとなる。

なお、本研究は環境省地球環境保全等試験研究費(公害防止)「四万十川における環境保全型農林水産業による清流の保全に関する研究」による。

17 fig1

図1 地形データによる陰影図

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図2 市町村別平均傾斜角

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図3 林業センサスにおける市町村別人工林率

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図4 林業センサスによる市町村別人工林率の推移
各図は10年もしくは30年間の変化を示す。

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