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更新日:2012年7月18日

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ホウ素によるペクチンの架橋が植物の成長に必須である

樹木化学研究領域 樹木生化学研究室 石井 忠
九州沖縄農業研究センター 松永 俊朗
きのこ・微生物研究領域 微生物工学研究室 林 徳子

背景と目的

樹木の成長は、形成層組織で誕生した細胞が、まず伸長して体積が増加する段階と、次に細胞壁が肥厚し木化する段階からなり、このいずれの過程でも、細胞壁を構成するペクチンが重要な働きをしている。我々はこれまで、2分子のペクチン性多糖ラムノガラクツロナンII(RG-II)が1分子のホウ酸により架橋されている、RG-II-ホウ酸2量体(dRG-II-B)が細胞壁に存在することを明らかにした。この架橋構造は、単子葉植物(タケやササなど)、双子葉植物(広葉樹を含む)や裸子植物(マツやスギなど)を含む種子植物では同じ形をとっていた。そこで、RG-II-ホウ酸2量体の細胞壁中での機能を明らかにすることを目的として、発芽率が高く、成長が早いカボチャを材料に用いて研究を行った。

成果

発芽したカボチャをホウ酸(10μM)を含む培地で1週間水耕した後、ホウ酸を含まない培地(B(-)培地)に移し、さらに1週間水耕した。B(-)培地で栽培した第2葉〜4葉は、ホウ酸を十分に含む培地(B(+)培地)に比べて約半分の重さ(生重量)であり、ホウ素欠乏症状を示した。また、第2〜4葉では葉に含まれるホウ素の90%以上が細胞壁に存在した。

細胞壁をペクチン分解酵素で加水分解し、分解物をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析したところ、B(+)培地で栽培した葉では、ラムノガラクツロナンII (RG-II)は90%以上がホウ酸2量体(dRG-II-B)として存在していた。それに対して、B(-)培地の第2〜4葉では、RG-IIの80〜90%が単量体であった(図1)。このことは、B(-)培地で育てたカボチャの第2〜4葉ではホウ素が不足しているので、RG-IIはホウ酸と結合できなかったことを示している。

B(-)培地で1週間栽培したカボチャを、ホウ素の安定同位体10Bを存在比95%まで増やしたホウ酸を含む培地へ移すと、葉や細胞壁の10Bの割合が経時的に増加した(図2)。また、細胞壁中ではRG-IIがホウ酸と結合して、dRG-II-10B割合が増加した。なお、ホウ素は誘導結合プラズマ発光分析法により定量した。

透過電子顕微鏡による観察の結果、B(-)培地で栽培されホウ素が欠乏した細胞壁は、B(+)培地で栽培されホウ素が十分なものに比べて膨潤しており、細胞の接着面である複合中間層が濃く染色された(図3)。しかし、B(-)培地で栽培後、B(+)培地に移すと、5時間で細胞壁の厚さはB(+)培地のものとほぼ同じ厚さまで収縮した。膨潤した細胞壁は骨粗鬆症の骨のように脆く折れやすいので、組織を支えることができない。このように、細胞壁中でのRG-II-ホウ酸複合体の生成によるペクチンの架橋により、細胞壁の力学的強度が正常に保たれることを示した。

なお、本研究は交付金プロジェクト研究「形態・生理機能の改変による新農林水産生物の創出に関する総合研究」による。

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図1 細胞壁中のホウ素含量とdRG-II-Bの割合

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図2 ホウ素欠乏した葉への10Bの取り込み

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図3 ホウ酸処理による細胞壁の微細構造の変化

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