このページでは、以下各国のREDDプラスに関連した動向を紹介します。
主要国の動向
詳細ページ、PDF資料あり (最終更新日:2012年4月11日)
カンボジア王国

カンボジアでは森林減少が現在も進行しつつありますが、いまだ広大な森林が残っています。しかしながら、焼畑農業、土壌浸食、農地への転換、違法伐採、過剰伐採、森林火災、そして内戦時の化学薬品使用の影響等によってかなりの森林が劣化しています。このような状況に対して、援助機関の支援によってREDDに向けた取り組みが進められつつあります。
ラオス人民民主共和国

ラオスでは1960年代には70%であった森林率が、過度の伐採や農地転用などを主な原因として2002年には41.5%まで低下しています。森林減少と劣化の主な要因は、民間企業や小自作農によるプランテーション造成や商品作物栽培、水力発電、鉱業、インフラ開発、違法伐採や焼畑農業です。
ラオス国政府は、2020年までに森林被覆率を70%まで回復する計画を立て、森林法の整備等に取り組む一方で、REDDプラスに向けた準備も進めています。
インドネシア共和国

インドネシアは、最近になって森林減少率が低下しつつあるものの、いまだ世界で最も森林消失の激しい国の一つであり、2008年のギネスブックには世界一森林消失の早い国として掲載されています。
インドネシアにおける大きな課題として、森林の農地への転換や違法伐採に加えて、オイルパームプランテーションや製紙用パルププランテーションの拡大と、泥炭地の乾燥・分解とそれにより引き起こされる火災が挙げられます。オイルパームやパルプ・製紙用樹木のプランテーションは、主にスマトラ、カリマンタンで拡大していますが、これらの多くが森林や泥炭地の転換によるものです。この転換自体が温室効果ガスの大きな排出源となるとともに、収穫・伐採を容易にするために湿地の排水が行われることで泥炭地の乾燥・分解が起きるため、乾燥した泥炭に火がつくと大規模な火災に繋がり、大量の二酸化炭素が放出されます。
2007年11月には、国際湿地保全連合(Wetland International)が、「森林破壊による泥炭湿地からの排出量を含めると、インドネシアが世界第3位の二酸化炭素排出国になる」と発表しました。REDDの実施によって、これら森林におけるプランテーション拡大を防ぎ、泥炭地管理に向けた制度構築・能力向上を促すことが期待されています。
タイ王国

タイでは1961年には国土面積の53%であった森林面積が1991年には26.6%に減少しており、特に北部、東北部において著しい森林減少がみられます。そのため、タイ政府は丸太の輸出禁止や天然林の伐採禁止などの措置を取るとともに、1985年には森林面積を国土面積の40%にする国家森林政策を策定し、1991年から2020年までの計画期間で国家造林長期計画を実行しています。
タイのREDDプラスの進捗状況は、世界銀行FCPF(森林炭素パートナーシップ基金)へR-PIN(Readiness Plan Idea Note)は提出済みであるものの、UN-REDDプログラムには参加しておらず、周辺諸国に比べると目立ったREDDプラス活動が見られません。同国では現在、国立公園・野生動物・植物保全局(Department of National Park, Wildlife, and Plant Conservation: DNP)、王室森林局(Royal Forest Department: RFD)ともに国際熱帯木材機関(ITTO)の支援を受け、国有林資源監視情報システムを確立し、タイ全土をカバーした森林モニタリングを実施しています。
コロンビア共和国

コロンビアにおける過去数十年間の平均的な年間森林減少面積は約10万haで、その規模は天然林面積の0.18%に相当します。森林減少の主な要因は農地開発、インフラ整備、森林火災、木材生産等で、その背景には土地所有形態や木材市場の複雑さ、武力紛争等の影響によってガバナンスが充分に機能していないという事情があります。
2011年時点では、米国国際開発庁(USAID)、国際熱帯木材機関(ITTO)、WWF、CI等がREDDプラスへの取組みを実施しており、地域社会における能力開発や森林の保護が行われています。
ガーナ共和国

ガーナでは1970年以降、森林減少が続いていますが、森林減少よりも段階的な森林劣化が課題となっています。森林劣化の直接的要因として、過剰伐採、木材セクターに関する政府・市場の失敗、農産品や木製品の需要増に繋がる都市・農村部での人口増加、木材に対する国際市場での高い需要、エネルギーの炭や薪への依存、焼畑農法が指摘されています。
REDDプラスへの取組状況は、2007年に世界銀行FCPF(森林炭素パートナーシップ基金)へR-PIN(Readiness Plan Idea Note)を提出し、2008年7月に承認を受けました。資金支援については、準備段階への支援として既にFCPF準備基金より360万米ドルの支援を得ています。
コンゴ民主共和国

コンゴ民主共和国(以下、DRC)は世界で2番目規模の森林面積を持ち、REDDプラスによる排出削減に高い潜在能力を有する国です。
DRCは、2009年11月の首相令により、国家レベルでのREDD準備のための委員会を設立し、REDDに関する政策決定や計画、調整等を行っています。国家REDDプラス戦略がUN-REDDプログラム政策委員会に承認された後、国家プログラム文書が2010年10月に署名、UN-REDDプログラムの公式発足とともに、支援資金が同年11月に配分されました。
タンザニア

タンザニアには35.3百万haの森林が存在し、そのうち18.3百万haは保護林(Reserved Forests)です。保護林のうち、1.6百万haは水源涵養林(Water Catchment)、生物多様性、土壌保全を目的とした森林であり、2百万haは野生動物保護区に指定されています。
しかしながら、2000年から2010年の森林減少面積は世界5位(-403千ha)にランクされており、森林減少の要因として、保護林への不法侵入、耕作地への転換、山火事、違法伐採、鉱山開発、薪採取、バイオ燃料生産のための大規模農業の導入等が挙げられます。
マレーシア
ベトナム
ブラジル
このように森林資源量が多く、森林減少・劣化が著しいブラジルに対して、先進国政府、企業、環境NGO等を中心とした、森林減少・抑制の活動が活発となっています。
例えば、ノルウェー政府は、2009年から2015年まで最長7年間にわたってアマゾンの森林管理を実施するために総計10億ドルの資金拠出を行うと決定し、2009年11月にブラジル政府と覚書を締結しました。このアマゾン基金と呼ばれる資金供与を契機として、ブラジル政府は初の国家レベルでのREDDプログラムを実施すると発表しました。ブラジル政府はREDDについての国際的議論の中で、取り組みを推進するための十分な資金を確保するには、市場メカニズム方式ではなく基金方式(森林減少面積に応じた資金配分)が必要であると主張しています。
また、多国間の開発銀行が運営する気候投資基金(Climate Investment Fund)内のプログラムである森林投資プログラム(Forest Investment Program:FIP)のパイロットプロジェクト対象国にも選定されています。
参考・引用情報一覧
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USAID/ASIA(2010)Asia Regional REDD Program Planning Assessment Report.
http://www.usaid.gov/rdma/documents/USAID%20RDMA%20REDD%20ASSESSMENT_final.pdf
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JICA/ITTO(2010)森林減少・劣化の抑制等による温室効果ガス排出量の削減─開発途上国における森林保全─.
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貴島善子(2010)REDD+パートナーシップ及び今後の見通しについて.外務省気候変動課.
http://www.jbic.go.jp/ja/about/topics/2010/0908-01/100727_redd_kijima.pdf
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Environmental Defense Fund(2009)Brazil national and state REDD.
http://www.edf.org/documents/10438_Brazil_national_and_state_REDD_report.pdf
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百村帝彦(2009)カンボジアにおけるREDD パイロットプロジェクトの現状と課題-コミュニティ林業によるカーボンオフセット・プロジェクトの事例-.熱帯農業研究第2号.37-38.
http://enviroscope.iges.or.jp/modules/envirolib/upload/2394/attach/hyakumura.pdf
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FoE Japanウェブサイト インドネシア泥炭地破壊で世界第3位のCO2排出国に
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UN-REDDプログラムウェブサイト
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ITTOウェブサイト
REDDに取り組む各国の状況は変化を続けているため、本ページの内容は必ずしも直近の情報を反映していないことがあります。ご意見、お気づきの点等がございましたらREDD研究開発センターまでお知らせ下さい。