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長期的なオゾン濃度の上昇がブナの気孔を閉ざし光合成速度を低下させる
 -森林衰退の原因解明の足がかりに-

2009年1月19日掲載

論文名 Effects of chronic elevated ozone exposure on gas exchange responses of adult beech trees (Fagus sylvatica) as related to the within-canopy light gradient(樹冠内の光勾配を考慮した、オゾン濃度上昇による光合成反応への影響評価)
著者(所属) 北尾光俊(企画部)、Markus Löw、Christian Heerdt、Thorsten E.E. Grams、Karl-Heinz Häberle、Rainer Matyssek(ミュンヘン工科大学)
掲載誌 Environmental Pollution(環境汚染、イギリス)、2009年1月
内容紹介  近年、オゾン濃度上昇が原因と考えられる森林衰退が北アメリカ北東部や中央ヨーロッパで発生していますが、日本でも一部の衰退した亜高山帯林や丹沢のブナ林で高濃度のオゾンが観測されています。高濃度のオゾン(通常の2倍)はブナ苗木の光合成の生化学的な活力を低下させますが、ブナの成木は苗木よりも感受性が低いと言われています。そのため、野外の欧州ブナ成木で大気の2倍の高濃度オゾンの暴露実験を7年間行っているミュンヘン工科大学と共同で、樹冠内の光強度の違いに着目して光合成反応に及ぼすオゾンの影響を調べました。その結果、光強度は気孔コンダクタンス(開き具合)に影響しますが、高濃度オゾン下では樹冠内の光強度に関わりなく気孔コンダクタンスが有意に低いこと等から、オゾン濃度上昇は光合成の生化学過程を阻害する前に、気孔の閉鎖を促しCO2取り込みを抑制することで光合成速度が低下することが明かになりました。したがって、大気中のオゾン濃度が長期間上昇すると、光合成が長期にわたり低下し、衰退の大きな原因になることが考えられます。

 

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