研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2009年紹介分 > 日本海周辺地域に分布するエゾマツ変種群の地域集団間の遺伝的関係を明らかに
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2009年6月15日掲載
論文名 | Range-wide genetic structure in a north-east Asian spruce (Picea jezoensis) determined using nuclear microsatellite markers.(核マイクロサテライトマーカーを用いた北東アジアのトウヒ属樹種エゾマツに関する広範囲の遺伝的構造の解明) |
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著者(所属) | 逢沢 峰昭(宇都宮大学・森林総研客員研究員)、吉丸 博志(森林遺伝研究領域)、斎藤 秀之(北海道大学)、勝木 俊雄(森林植生研究領域)、河原 孝行(北海道支所)、北村 系子(北海道支所)、Fuchen Shi(中国Nankai大学)、Renat Sabirov(ロシア科学アカデミー)、梶 幹男(東京大学) |
掲載誌 |
Journal of Biogeography(生物地理学誌、イギリス)、2009 年 |
内容紹介 | エゾマツおよびこれと非常に近縁な変種であるトウヒやチョウセントウヒを合わせたエゾマツ変種群は、北東アジア亜寒帯林の主要な構成樹種です。日本・ロシア・中国・朝鮮半島などの日本海周辺地域に分布し、国内では北海道にエゾマツが、本州の中部山岳と紀伊半島にトウヒが自生しています。 筆者らはこれまでにミトコンドリアDNAの解析により、北海道のエゾマツはサハリンやロシア大陸部と、一方本州のトウヒは朝鮮半島との関係が深く、両者は形態的には非常によく似ているけれども、遺伝的には由来が異なることを明らかにしてきました。このような知見に加えて、今回の研究では、さらに核DNAの解析により、1)エゾマツ変種群が北海道+南サハリン、北サハリン+ロシア大陸部+中国、カムチャッカ半島、朝鮮半島、本州中部、紀伊半島という6つの地域群に遺伝的に大きく分かれること、2)カムチャッカ半島、朝鮮半島、紀伊半島では遺伝的な多様性が非常に低いこと、3)北海道とサハリン南部ではボトルネックと呼ばれる小集団化の痕跡が遺伝子の変異の中に残っていること、等の詳細を明らかにしました。 これらの知見は人間の歴史よりはるかに長い樹木の地域集団の歴史を明らかにする情報であり、国内の北海道、中部山岳、紀伊半島の集団は個別に保全管理する必要があり、他地域の個体を植栽することによる遺伝的攪乱は防止すべきことなど、エゾマツ資源の保全と利活用の両立に活かされます。 |
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